旅客機パイロットにとって、離陸と着陸は非常に神経を使う時間です。実際、旅客機事故の発生率は離陸滑走開始後の3分間と着陸前の8分間が最も高いという統計があり、航空の世界では「魔の11分間」と言われるほどです。そんな離陸と着陸に非常に影響を与える空港周辺の急激な風の変化、いわゆる“乱気流”(ダウンバーストやウインドシア)は、旅客機にとって重大な脅威となりかねません。そんな乱気流をキャッチしようと、気象庁がレーザー光線を使った観測装置「ドップラーライダー」を羽田空港に日本国内では初めて設置します。12月中旬から試験運用を開始し、来年の秋には本格稼動する予定だそうです。
※ダウンバースト:下降気流の中でも、地上に災害を起こすほど極端に強いものを指します。着陸時にダウンバーストが発生すると飛行に必要な浮力を失い、地面に叩き付けられる可能性もあるため、発生が確認されると空港管制塔は着陸許可を出しません。
※ウインドシア:着陸寸前(地表に近い低層粋)に風向きが変化し、翼に影響を与え旅客機が危険な状態になる風のことを指します。旅客機にはウインドシアを感知するレーダーが設置されており、感知すると警告が発せられパイロットは速やかにゴーアラウンドをします。
現在、羽田空港をはじめ全国8空港に設置されているドップラーレーダーは、電波を発射し、半径100キロ以内の雨粒や雲の動きを観測し、雲や風の動きをつかむことができます。ただし、雲や雨粒の動きを観測し、動きをつかむわけですから晴天時には観測が難しいとされています。
一方、今回設置される「ドップラーライダー」は、赤外線レーザー光線を発射して空気中の小さいチリの動きを観測して、風向きや風速を把握するもので、天気の良い時も風の動きを知ることができる最新の装置となります。地上約30メートルから500メートルの半径10キロの範囲を観測できるそうです。羽田空港の旧整備場地区にあるビルの屋上(地上約30メートル)に設置の予定で、設置費用は約2億円。
気象庁では今後、ドップラーライダーは霧が濃い場合にはレーザーが遠くまで届かないため、ドップラーレーダーと組み合わせて、全天候型の警告システムを構築したいとしています。2008年度以降に、レーダーとライダーの情報を合成して航空会社や空港の管制施設に提供する予定です。
実は羽田空港には特有の「ハンガーウエーブ」と呼ばれる乱気流があり、この現象の解明や対策にもつながる可能性があり、期待されています。空の安全に役立ってくれるとありがたいですね。
※ハンガーウエーブ:羽田空港A滑走路の発着機に影響を与えるもので、滑走路手前の東側にある整備地区の格納庫(ハンガー)が、東京湾からの北北東の風の障害物となり発生する乱気流を指します。

