本ブログでも何度か紹介したことがあるYS-11に続く、三菱航空機が開発中の日の丸ジェット「MRJ」(Mitsubishi Regional Jet)ですが10月2日、アメリカで地域路線を運航するTrans States AirlinesとGoJet Airlinesの2社を傘下とするトランス・ステーツ・ホールディングス(TSH)と100機(確定50機、オプション50機)の受注に関する覚書を締結しました。MRJは、2008年3月27日に全日空からの合計25機(確定15機、オプション10機)の発注のみにとどまっていました。海外からの初受注・大量受注ということで、競争の激しい小型航空機市場での受注拡大に弾みがつきそうです。
※TSH傘下のTrans States AirlinesとGoJet Airlinesの2社は、ユナイテッド航空(ユナイテッド・エクスプレス便)とUSエアウェイズ(USエアウェイズ・エクスプレス便)からアメリカ国内のフィーダー路線(ローカル都市への接続路線)の運航を受託しています。毎日350便を50都市間で運航。

MRJのイメージ図。先日発表された機体仕様変更は、さまざまなバリエーションに安価に対応でき、さらに大型のオーバーヘッドビンの採用、貨物室を一元化することにより航空会社のオペレーションの単純化、またもともとの低燃費と、航空会社にとってさらに魅力的な航空機となったことは間違いありません。今回の大型発注はまさにこうした努力が認められてきたことを示していますね。(Image/MITSUBISHI AIRCRAFT CORPORATION)
今後の予定としてはTSHには2014年に初号機を納入後、5~6年かけて100機を納入していくとのこと。受注額は明らかにされていませんが、MRJ 90のリストプライスは1機で約4,000万ドル(約36億円)ですので、100機で40億ドル(約3,600億円)という本当に大型受注となりました(リストプライスよりも安いとは思いますが)。
三菱航空機の江川社長は、「100機もの受注につながり、喜ばしい」と述べ、さらに「今後20年で1,000機の受注獲得を目指したい」と語っています。TSHのリチャード・リーチ社長は、「正直、厳しい経済環境下だが、高い技術や優れた運航性能、乗客の快適さなどをみて決定した」と、選定理由を説明しました。
MRJは、最先端の空力設計と最新鋭のエンジンの組み合わせにより、大幅な燃費低減を実現するとともに、低騒音・低排出ガスなど環境面でも優れた小型機です。今後、多くの空港で航空機の環境基準が厳しくなることを考えると、より多くの空港でMRJの運用が可能となることも、今後の強みとなることは間違いありません。また居住性に関しても、1列4席の配置、大型のオーバーヘッドビンの装備、新型スリムシートなどの採用により、これまでの小型機にはない快適なキャビンになりそうです。
TSHでは、MRJ 70(78席)・MRJ 90(92席)・MRJ 100(100席)のどの機種にするかは決定していませんが、今後の経済情勢を見ながら判断するとしています。TSHでは現在、Trans States Airlinesがブラジル・エンブラエル社のEmbraer ERJ 145EP(10機)、Embraer ERJ 145LR(25機)を使用し、GoJet Airlinesは、カナダ・ボンバルディア社のBombardier CRJ-700ER(21機)を使用しています(GoJet Airlines はCRJ700NextGenも発注済み)。TSHではMRJをどちらの航空会社で使用するかを明言していません。TSHはアメリカ国内の大手エアラインのフィーダー路線の委託運航を行っていることから、MRJの優位性を自社の委託受注の大きなウリとして使用するかもしれませんね(実際2014年にユナイテッド・エクスプレスとの契約更新時期が訪れます)。
しかしこれでアメリカのリージョナル航空業界で高い評価を得たことになりますので、今後さらに受注数を増やすことも可能となってきました(先日の機体仕様変更はアメリカのリージョナル航空業界にとてもマッチしたものでしたので、早速効果があったというところでしょうか)。小型機の採算分岐点は350機前後といわれていますのでまずはそれを目標にし、さらに三菱航空機の江川社長がいう1,000機を目指してもらいたいものです。

