日本初の国産ジェット機三菱航空機の「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」の生産が9月30日にスタートしました! MRJは1974年に生産中止となった双発ターボプロップエンジンのYS-11以来となる国産旅客機事業として期待されています。政府も航空機産業を次代の成長産業のひとつとして位置付けており、開発費約1,500億円のうち国が約500億円を負担しています。

MRJ(Mitsubishi Regional Jet)の完成予想イメージ。ついに生産がスタートしました。順調に予定通りスケジュールが進むと2012年には初飛行を行い、2014年には全日空に初号機が納入される予定です。(Image/三菱航空機)
YS-11の撤退以来、日本の航空機メーカーは、ボーイング社やエアバス社の航空機の機体の一部などを請け負うだけの下請け的位置にとどまってきました。またそれすらも中国などといった新興国企業との競争も激しくなってきています。最先端技術の塊といえる航空機生産は、国内の部品・素材メーカーの技術力を伸ばし、関連産業にも波及効果があり、日本の航空機産業のレベル向上にもつながります。MRJの成功は日本の航空機産業の悲願ともいえるでしょう。
今回生産が開始されたのは、水平尾翼結合リブ部品。9月30日に三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所大江工場にて、メタルカット式典が行われ、その場でアルミニウム合金製部品の切削加工の様子が公開されました。長さ840×幅400×厚さ60mmのアルミ合金の約95質量%を削って部品に仕上げるというもの。今後、大江工場で部品の生産、飛鳥工場で胴体や主翼、小牧南工場で機体を組み立てる予定。
※ちなみに大江工場は戦前に「零戦」が開発された場所で、小牧南工場はYS-11を生産した工場でもあります。
MRJは本ブログでも何度か紹介していますが、座席数100席クラスの小型ジェット機(リージョナル・ジェット)です。2009年9月に素材・設計変更を行い、機内の快適性をアップし、さらに炭素繊維と樹脂を組み合わせた軽量素材と新型エンジンで燃費も他社の同型機と比べ20~30%良いものとなっています。
世界の航空業界の予測では、大都市のハブ空港から地方空港へ、また地方空港間を結ぶ中・近距離向けの機体として、小型ジェット機は今後20年間で5,000機近い需要が見込まれるとしており、MRJの入り込む余地は大きいといえるでしょう(目標としてMRJは5,000機のうちの1,000機の受注を目指すとしています)。しかし皆さんもご存知のとおり、100席クラスの小型ジェット機は、カナダのボンバルディア社、ブラジルのエンブラエル社の寡占状態といってよく、さらにロシアのスホーイ、中国の中国商用飛機も参入しており、後発であるMRJがどこまで食い込めるか今後の新規受注獲得が鍵となってきます。
※同型機の比較は表を参照してください。
●各社同型機比較
| 三菱MRJ90 | ボンバルディアCRJ900 | エンブラエルEMB190 | スホーイSSJ100-95 | 中国ARJ21-700 | |
| 座席数 | 92 | 86 | 98 | 98 | 85 |
| 航続距離 | 1,700km | 2,414km | 4,448km | 3,048km | 2,200km |
| 巡航速度 | M0.78 | M0.83 | M0.82 | M0.78 | M0.82 |
| エンジン | P&W PW1000G | GE CF34-8C5 | GE CF34-10E | PowerJet SaM146 | GE CF34-10A |
| 進行状況 | 生産開始 | 2003年納入 | 2005年納入 | テスト飛行 | テスト飛行 |
現在のところ、全日空とアメリカのトランス・ステーツ・ホールディング社の2社へ計125機の納入が決まっていますが、採算ラインは350機とされていますので、まだまだ現状は厳しいところ。7月に行われた「ファンボロー国際航空ショー」でも受注はゼロだったことを考えると先行きは明るいものではありません。しかし、今後三菱航空機ではアメリカに次ぐ営業拠点として年内にヨーロッパに設ける計画で、営業人員を増やし大型受注を目指すとしています。
今後のスケジュールとしては、2012年春初飛行、2014年初号機を全日空に納入予定としています。ただ飛ばすだけではなく、息の長いビジネスとして競争を勝ち抜けてほしいものです。

