前回、バリで現在見る事のできる絵画のスタイルとして、トラディショナルスタイル、プンゴセカンスタイル、ヤングアーティストスタイルの3つをあげました。けれど実はここ10年近く、絵画を学ぶ若者たちに圧倒的な人気なのが、これらの伝統的なスタイルのどれにも属さない、いわゆるモダンスタイル。伝統的な手法にとらわれず、色彩もスタイルも自由な絵が、最近はここ伝統的絵画の村ウブドでも、若者たちの主流になってきています。



もともとバリの絵画というのは、西洋の「芸術」という視点からより、日本の「職人技」という視点で捉えた方が近いものがあるように思います。ある意味、親から子へ受け継がれる伝統芸能のひとつだったのですが、そこに西洋の技法が入り込み伝統は少しづつ形を変えていきました。プンゴセカンスタイルもヤングアーティストスタイルも、言ってみればそこから生まれた新しいスタイルのうちのひとつだったのです。
そしてここ10年ちょっと。外国からの文化の流れを受けて、若者たちはさまざまなスタイルの絵画に触れるようになりました。その結果、バリの若者たちの絵画もごらんのように変化してきたのです。






中には、いかにも「どこかで見たぞ」というようなものもあります。ん?と首をかしげてしまうようなものも、ないわけではないのですが、これは言ってみれば「過渡期」の現象のひとつのあらわれ、とも言えるのではないかと思います。
古くは1930年代、オランダに占領されていた時代に、ドイツ人画家ウォルターシュピースやオランダ人画家ルドルフボネらがこの地に住み着いて、現在のバリ絵画の隆盛のきっかけをつくりました。そして1950年代以降のアリースミット、そしてウブドで生涯を終えたスペイン人画家アントニオブランコなど、多くの外国人巨匠をひきつけてやまなかったウブドの土地。彼らの教えを受けた、バリ絵画の現在の巨匠たちは、今でも精力的に制作活動を行っていますし、そして今、若者たちはさらに新しいスタイルを模索しています。
伝統に固執することなく、とらわれることなく、伝統を取り入れたら新しいスタイルを作ろうとする。それがバリの芸能の姿です。そんな、しなやかでしたたかなバリの姿を、バリ絵画からもまた、私たちは見ることができるのですね。


めぐみ
96年より渡バリ。バリ人画家と結婚し三人の子供と旦那の家族総勢13人で生活。ホテル勤務のかたわらウブドにてバリの素材を使った日本家庭料理とバリのおいしい地酒を飲ませる小さなワルン(食堂)を経営。
