ヴェネツィアの居酒屋、バーカロ巡り

 世界中どこへ行ってもその国、その土地ならではの酒がありますね。日本なら米から作る酒、イギリスならウイスキー、メキシコならテキーラ、中国は老酒とか、ドイツやベルギーではビールが主流。そしてイタリアはワインです。ただ、朝からワインを飲むという習慣はイタリアでもヴェネツィアとその近郊の町やピエモンテ州のトリノ周辺くらいなものでしょう。やはり、冬になると寒くなるので、体を温めるためにワインを飲むわけです。アルプスの山岳警備隊などはワインよりアルコール度数が強いグラッパを飲んだりします。イタリアでは全土で素晴らしいワインを生産していますが、南部はもちろん、ローマやフィレンツェでも朝からワインを飲むというのはあまり見られません。その代わりにバールでエスプレッソですね。北イタリアでもミラノとなると、やはり朝はコーヒーが多いようですから、ワインを飲むというのはヴェネツィア独特ですね。

 ヴェネツィアでは居酒屋を「バーカロ」と呼んだりしますが、この言葉は1800年代に生まれたものです。そもそもワインの歴史は古代ローマ時代以前からイタリア半島にありまして、先住民族のエトルリア人もワインを飲んでいたそうですし、ポンペイの遺跡には多くの居酒屋の跡が見られます。ヴェネツィアで現存する最古の居酒屋としてはリアルト地区にあるド・モーリ(Do Mori)で正式な文書に残る記録では創業が1462年というから老舗中の老舗ですね。

 ド・モーリの正式名称はカンティーナ・ド・モーリ、カンティーナというとイタリア語ではワイン倉庫や一般住宅での納屋的な意味合いがあります。酒を飲むだけでなく、売ったりもしています。ド・モーリでもボトルのワインの他、一般的にはヴィノ・スフーゾ(vino sfuso)と言って量り売りのワインがあります。ペットボトルなどを持って1リットル単位で家庭用に買って行ったりします。

さて、前にも書いたように、ヴェネツィアでは朝からワイン好きな男たち(たまには女性も)がバーカロをはしごして、写真のような光景が見られるわけですが、このバーカロの始まりは1800年代の後半にヴェネツィアがオーストリアと戦争をしていた時代まで遡ります。当時は傭兵が当たり前だったようですが、プーリア州のトラーニという町から傭兵として来ていたパンタレオ・ファビアーノという男が、戦争が終わって荒廃したヴェネツィアで故郷のトラーニから仕入れたワインで居酒屋の商売を始めました。その時に、客としてゴンドリエ(ゴンドラ漕ぎ)の一群がやってきてワインを一口飲んだところ、そのあまりの旨さに「これこそがバーカロのワインだ!」と叫んだのです。ものの本によると、このゴンドリエはワインを飲んでドンチャン騒ぎをするという意味があるバーカラと言ったところをバーカロと聞いた店の亭主が、その次の店を出したときに、店名に「バーカロ・グランデ」と名づけたと書いています。ギリシア神話の酒の神、バッカスをイタリア語ではバッコといいますが、そのバッカスが語源で、酒宴で騒ぐことをバッカナーレといいます。もっとも、イタリアではワインを飲みすぎて歩けないほど酔っ払っているなんて光景はあまり見たことがありません。ましてやヴェネツィアで一歩間違えれば運河に落ちかねないのですから、そこまで酔う前に家へ帰ります。

 右の写真の店はアンティコ・ドーロ(Antico Dolo)といいます。Doloはヴェネツィア近郊、本土側にある古い町で、周辺ではワインを作る農家がたくさんありました。料理も美味しく地元でも人気の見せですが、席数が少ないので夜は予約の観光客ですぐに満席になります。土地っ子は朝のオンブラーレで楽しみます。

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コメント (2)

noriko:

ブログ開設おめでとうございます!
立ち寄るサイトがひとつ増えて、また寝る時間が遅くなりそうです。(笑)

篠さんといえばバーカロ。早速のテーマで嬉しく読ませていただきました。
数年前に行ったヴェネツィアで、最後にどーしてもフラゴリーノが飲みたくて
出立の日の朝一番にド・スパーデに駆け込み、オンブラーレ(?)したことを
思い出しました。。。

ひ〜こ:

Do Mori好きです。
去年、篠さんに紹介していただいたバーカロ巡ったのを思い出します。
Veneziaでなら私でも飲んべになれる!って思いました。
ああ、早くイタリアに戻りたいなぁ…。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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