人物編2 女性を撮る

写真のジャンルには絵画と同様に風景、静物、人物があります。そしてまた報道や記録という分類もありますが、カメラがない時代は戦争などの記録も画家の仕事でした。僕もかつては画家を志していたのですが、絵筆をカメラに持ち替えたとき、惑いはほんの一瞬でした。レンズとカメラで描く絵画、それが僕の写真のモットーです。人物写真ではやはり女性をモデルとした写真が一番多いのではないかと思いますが、古来からギリシア彫刻のアフロディーテやダ・ヴィンチの描くモナリザ、そしてボッティチェッリが描くヴィーナスからピカソの描く妻や愛人まで、女性こそ美の象徴であり、メタファーでした。その女性を撮影するときにカメラを意識したポーズや作られた表情よりも日常のさりげない自然な瞬間のほうがよりその女性の人柄などを感じさせるでしょう。まあ、最近は肖像権とかいろいろと気を遣わなければならないのですが、それはそれとして、本人がカメラを意識しない自然な表情の美しさはなにものにも変えられないと思います。この写真は8月にシチリア取材をしたときに、タオルミーナの古代ギリシア劇場の入場管理をしている係員の女性を撮影したものですが、遺跡とタオルミーナの美しい海をたっぷりと眺めてきた後ではまさにヴィーナスが現れたかと思いつつ素早くシャッターを切ったものです。ええ、もちろん次にタオルミーナを訪れる時には彼女にこの写真をプレゼントしてきます。


この写真はレストランの隣のテーブルの女性を撮影しました。決して隠し撮りではありません。何度かシャッターを切っていましたので、きっと撮られている事には気づいていたでしょう。そんな表情を少し感じますね。後でお店のひとに聞いたらブラジルから仕事でタオルミーナに来ている常連のお客さんだそうです。店内の明かりとテーブルの上のロウソクの灯かり。一緒に来た友人の女性が席をはずした時ですが、夜の海を見つめながら母国を思っているのでしょう。


画家とモデル、女性を見るとプロのモデルさんかとも思える雰囲気ですね。ライティングは似顔絵描きの画家がセッティングしただけあっていい雰囲気ですね。実際はこれほど明るくはないのですが、最近のデジタル一眼レフの性能が向上し高感度と手ブレ防止機能のお陰で手持ちの撮影で大丈夫でした。僕は画家とモデル、ことにモデルに対してもっとも適切なアングルを探って撮りました。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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