2006年01月31日

歴史とみどころ ~ナポリ~

 イタリアで好きな町はとこかと聞かれたら、それはローマとヴェネツィアのふたつと真っ先に挙げますが、その次はどこかと言えば迷わずナポリです。この町は昔から貧しいと言われてきました。路地は危ない雰囲気たっぷりだし、今でもカメラなんぞ首や肩から下げてあるいていると、親切な人が立ち止まって注意されたりします。聞くところによるとナポリの町中に住んでいる人がスリやひったくりをするのではなく、町の外や近郊に住んでいる人間がそういう犯罪を犯すことが多いとか。かつては僕も財布を掏られたことがあります。また、聞くところによると日本のツアーなどは危険だからとナポリの町は観光バスの中に乗ったままでガイドさんの説明を聞いて終わるとか。それをナポリの友人に話したら、「俺達はライオンや豹じゃないし、ナポリはサファリ・パークなんかじゃないよ。しかし、それも仕方ないな。俺達だって町中を歩くときには油断できないし、貴重品なんか持ち歩かないから。君もカメラにはくれぐれも気をつけてくれ」言っていました。でも、そんなことにびくびくしていたらこの町の本当の良さは分りませんね。だから、とりあえずは貴重品や大金など、何も持たずに歩けばいいのです。
 そしてまずはナポリ湾に突き出たこの写真のお城、「卵城」に行きましょう。なぜ「卵城」と呼ばれるのかと言うと、魔術師ウェルギウスがこの城のどこかに卵を隠したが、その卵が壊れたときナポリも崩壊すると予言したからとか、12世紀にノルマン王、ルッジェーロ二世が建設したときに卵型をしていたからという説があります。メルジェッリーナの方から朝日を浴びてシルエットになる姿もなかなかいいですね。城の左側に降りていくとレストランやピッツェリア、バールなどがあり、夜も人で賑わうところなので、ホテルを向かいのサンラ・ルチアやヴェスヴィオ、エクセルシオールにとれば夜の散歩も比較的安全に楽しめるでしょう。だんだんと町の雰囲気に慣れてきたら、サンタ・キアラ教会やスパッカ・ナポリを歩いてみます。
 そうして2,3日でもこの町に滞在したら、もうあなたもナポリの虜になるでしょう。ナポリはけっして泥棒の町ではないのです。もっと、素敵な女性はハートを盗まれないように注意して下さい。日本人は被害に遭いやすいそうですから・・・



ナポリの卵城の向かいに建つサンタ・ルチアホテルとナポリ銀行に挟まれた道のすぐ脇にあるバール・オッフィチーナ。 夜になるとブルーのライトがきれいなモダンな内装の店です。向かいの銀行のところにタクシー乗り場があって、よくドライバーが休憩しています。


バール・オッフィチーナのオーナー、マリオ(Mario Auletta)さん。なかなかインテリで数年前の取材でサンタ・ルチアホテルに1週間ばかり滞在した時に毎晩通って仲良くなりました。彼は98年に「Menu」というタイトルの詩画集を出しましたが、洒落た色使いの水彩画がアイロニカルでユーモアたっぷりの詩に添えられています。いろいろなカクテルを作ってくれますので、ナポリに行ったおりにはぜひ僕の友人だと言って寄ってみてください。


バール・オッフィチーナの主人、マリオ・アウレッタさんが98年に出版した詩集「Menu」は食べ物をテーマにした詩ですが、二重の意味を織り込んであるというその言葉はすべてナポリ方言でかかれているので、僕には読めません。でも、もし日本でこの翻訳本を出してくれる出版社が見つかれば彼は喜んで僕にまかせると言ってました。ちなみに、このレモンが描かれているページの詩は恋人との愛をうたっているようです。

BAR OFFICINA
VIA SANTA LUCIA 169 NAPOLI
TEL:081・7647171

2006年01月28日

アグリツーリズム 「シチリアのアルカラ」

 シチリアの第2の首都と言われるカターニアから西へ30分ほど車で走ると“アルカラ”というオレンジ農園のアグリトゥリズモがあります。22ヘクタールの土地には見慣れたブロンド種のオレンジやシチリアならではの中身が赤いタロッコと呼ばれるオレンジの他に、マンダリン、レモン、グレープフルーツなどの柑橘類を種に栽培している農家です。僕がここを始めて訪れたのは94年の9月でしたが、昨年の8月に久々に訪ねました。季節的にはまだオレンジが熟れて実ってないのですが、レモンの中には夏に実るものもあり、またオレンジとマンダリンを掛け合わせたものなどもあります。
 初めてこの農園を訪ねて感動したのはオレンジの花のハチミツでした。シチリアではザガラと呼ばれるオレンジやレモンの花から蜜蜂がせっせと集めた蜂蜜ですが、そのえもいえぬ香りたるや、ヴィーナスの薄絹を思わせる甘く優雅な香りです。これと大変良く似た感じが甘いマスカットなどの葡萄の果汁でした。しかし、それはあくまでも似ているだけであって、ザガラの香りには脳髄に染み込むような陶酔感をもたらせます。ある時、深夜のアウトストラーダをシチリアの友人の車で走っていたとき、街燈の少ないところでヘッドライトを消して真っ暗闇を走ったとき、運転していた友人が窓を開けろというのでおもむろに開けたとたんにそのえもいえぬ甘い香りがフワッと車の中に充満し、僕は宙に浮いたかのようなここち良さでした。

 シチリアに行くとたいがいはこのザガラのハチミツを見つけることが出来るのですが、アグリトゥリズモ、アルカラのハチミツは別格です。ハチミツの瓶の蓋を開けた瞬間に、まさにザガラそのものの香りがハチミツに溶け、封じ込められているのです。そしてもうひとつのお目当てはオレンジのママレードです。これもまた、香りと味わいの深い素晴らしいもので、カターニア近辺に来たときには必ずこのアグリトゥリズモ、アルカラに立ち寄ることをお薦めします。EUの取り決めで、アグリトゥリズモの製品は貿易の商品として輸出できないという制約があるそうなので、ここに観光に来て手土産にするしかないのですが、その目的のためだけにシチリアを訪れ、このハチミツをゲットするだけでも満足できるでしょう。
写真はオーナーのアンナ・サプッポさんが園内で一番葉が大きくなるオレンジの葉を見せてくれたところですが、この木は何度か接木をしていますので、元の木の幹がとても大きくなっていますね。

Agriturismo ALCALA
Loc.Terrebianche-S.S.192km 78-95045 Misterbianco(CT)
tel:368-3469206
e-mail:alcala@virgilio.it
http://www.omnia.it/alcala/



これがアルカラ自慢のハチミツとママレード。一生に一度はこれを味わいたい、と思うほどの素晴らしさです。

アルカラには4棟のアパートメントがありますが、いずれも自炊できるアパートメント形式です。しかし、時にはここを訪れた観光客の人たちがそれぞれの手料理を持ち寄って、かつてワイン蔵だったところで一緒に食事を楽しむこともあります。

昨年の8月に訪れたときにはすでに実っていた早生種のレモン。以外に甘味があり、果汁を炭酸水で割って飲むと疲れがいっきに消えました。


今ごろはこんな感じでオレンジを収穫できます。中身が赤いタロッコ種はもっと遅くて3月から4月だそうです。それにしても、花まで同時というのは不思議、さすがにシチリアですね。

2006年01月25日

シチリアの大地

 去年は取材でシチリアに2回行きました。1回目は8月で2回目が11月。8月に行った時には猛烈な暑さで、連日40度近くになります。でも、空気が乾燥していたせいか、日陰に入ればそれほど辛くもなかったです。一番きつかったのはアグリジェントの神殿の谷を歩いていたときで、日陰も少ないので、重いカメラバッグを担いで歩いていると、自分が選んだ仕事を呪いたくなるほどでした。でも、まあ、それも今はすっかり忘れてしまって、まさに喉もと過ぎれば熱さ忘れるように、このところの東京の寒さでは、むしろ夏のシチリアが恋しくなるほどです。ドイツの文豪ゲーテもその旅行記に、「シチリアは6月には全ての収穫が終わって大地には何もない」と書いてますが、そうせいぜい見れる植物の緑と言えば葡萄とオリーブとインドのイチジクと呼ばれるウチワサボテン、そしてオレンジやレモンとユーカリの木ぐらいで、畑は耕された土がひっくり返っているだけ。シチリアの大地が一番美しく見えるのは3月から5月頃までで、この季節には小麦の緑や赤や黄色の花々も咲いて、旅をするなら春がお薦め。気候が温暖なので何でも早く育って収穫できるのがシチリアの大地です。それだけに、美味しいものがたくさんある。海に囲まれているので魚介も豊富だし、野菜や果物、チーズやワインにオリーブオイルと、シチリアにいれば絶対に飢えるなんてことはないでしょう。この写真はパレルモから島を横断してアグリジェントに向かう途中のドライブインで休憩したときに撮ったものですが、ちょっと前にムッソメリという町を遠くに見ました。
雲も気持ちよさそうに浮かんでますね。わぁ、大空のハンモックみたいや!あの上で昼寝したら気持ちいいだろうなぁ・・・

ドライブインの前で農夫が野菜や果物を売っていました。果物は桃と梨(細長い洋ナシ)と野菜はピーマンに茄子でした。その茄子の大きなこと、赤ちゃんの頭ほどありました。こういう茄子は中が緻密でしっかりしているので、僕は一口大にカットしてオリーブオイルで素揚げして、ペペロンチーノを効かせたパスタに仕上げたり、薄くスライスしてカポナータと交互に重ねて焼いて食べたりします。日本では加茂茄子や米茄子を代用するけど、身の締まりはやっぱりシチリアですね。

ドライブインにあるバールではパンも売っていました。僕はシチリアのパンがイタリアで一番美味しいと思います。それはまず何よりもパン粉がいいからです。グラノ・ドゥーロという硬質小麦と水に塩だけですが、薪を使った石釜で焼き上げます。このパンの表面に白い粒が見えますが、これは白胡麻です。シチリアのパンは表面に胡麻がまぶしてある物が多く、これがまた美味しくしています。胡麻はセサミンという成分が肝臓にもいいのですね。けっこう日持ちもするけど、やっぱり3日位で消費するのがいいとバールのおじさんが言っていました。時間が経って固く乾いたパンは野菜の煮込みなどに入れたりします。

2006年01月23日

ヴェネツィアを撮る

 イタリアの旅を始めて以来、最も多く写真を撮ってきたのはヴェネツィアです。ローマ、ナポリ、フィレンツェ、ミラノと並んで語られるイタリアの代表的な都市でありながら、これほど特異な環境を持つところはありません。ラグーナと呼ばれる潟の中に築かれた都市、遠方から見ると水の上に浮かんでいるかのように見える幻想的な光景と町の中を縦横に流れる運河と路地。ヴェネツィア本島は120余りの小さな島が400もの橋で結ばれ、その間を流れる運河は180近くあります。この都市で一番賑わっているのがリアルト橋界隈とサン・マルコ教会の周辺で、それを結ぶ路地の両脇にはブティックやレストランなどがひしめき合ってますが、そこから少し離れて路地に迷い込むとひっそりと静まり返った空間があり、聞こえてくるのは自分の足音とどこかの家の軒先に吊り下げられた鳥かごで鳴くカナリアの声であったり、運河の岸を叩く水音、そして時折、行過ぎるゴンドラの櫂の音に、ゴンドリエ(船頭)が角を曲がるときの「オ~ィ」という掛け声。冬にはカーニバルの時期を除いて観光客も少ないので一段と静けさが町を包みます。そして冬にこの町を包むもうひとつがです。



霧に包まれたヴェネツィアは夕暮れ、幻想的な青の世界になります。この写真はコンタックスのレンジファインダー式カメラ、G2に28mmのレンズを着けて絞り4で撮影しました。三脚はなし。その代わりに建物のアーチの柱に寄りかかり、息を止めて4分1秒のスローシャッター。

ヴェネツィアの冬は冷えるのでついワインの量が増える。夜は馴染みの居酒屋で0時過ぎまで飲むこともある。千鳥足で宿へ帰る途中の運河で不思議な月を見た。いや、月と思ったのは運河を照らす大きなライト。霧に霞んでいるので光輪が広がる。端の欄干にカメラを固定して息を止める。カメラはコンタックスG2に45mm、絞りはF2.8のAE。こんな写真、やはりヴェネツィアじゃないと撮れない。それも冬に限る。



ヴェネツィアの冬の朝。前夜に飲む過ぎたので朝寝坊。サン・マルコ広場に出たときにはだいぶ太陽も昇っていたが気温は低い。稟とした空気が対岸の島にあるサン・ジョルジョ・マジョーレの姿を浮かび上がらせる。ゴンドラが1艘だけ漕ぎ出すところだった。光を十字に見せるクロスとブルーのフィルター2枚を使い、この雰囲気を少し強調した。

2006年01月20日

歴史とみどころ ~ヴェネツィアの家~

 水の都、そして今は世界遺産としてもますます観光客の人気を集めているヴェネツィア。美術館や教会には芸術のお宝に満ち溢れ、冬のカーニバル、春の競艇、ヴォガロンガ、夏の終わりのレガッタ・ストリカなど年間の行事も充実している上に、なによりも水の上に浮かんだような不思議な光景がこの都市の最大の魅力である。近年の温暖化で毎年冬に発生するアックア・アルタという洪水も年々、回数も多くなり、水位も高くなっている。冬もまたヴェネツィアならではの味わいがあり、この町を訪れるなら僕は冬が一番お薦めだが、アックア・アルタをも楽しんで欲しい。
 この町でもっともやっかいなのが物価の高さ。ヴェネツィアに住んでいれば水上バス利用などもカルタ・ヴェネツィアという定期券のようなものも利用できて、かなりの割安だが、観光客にとってはホテルがまず高い。一人旅が多いので、シングル・ルームは割高になるし、というわけで最近は友人が紹介してくれたレジデンスや友人の家のひと部屋を間借りする。それならばホテルの半分くらいの部屋代ですむ。複数のグループで行くときには2、3室ある家を1軒まるごと借りて、シェアするのがいい。キッチンも使えるので、市場を歩いて、食べたい魚介や野菜類を買って自分で調理もできる。
 この写真の部屋はサンタ・マリア・フォルモーザ教会とサン・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会の中間にあり、大家はサンタ・マリア・デイ・ミラーコリ教会のすぐ脇の広場で書店を営んでいる。ヴェネツィアへ着くと、まずその書店に寄って、大家から鍵を受け取る。キーホルダーには建物の外の鍵、中へ入って会談を4階まで上がって家に入る鍵、そして自分の部屋の鍵と3つある。しかし、少ない方で、ローマやフィレンツェ、ミラノなどでは家に入るだけでに2つや3つの鍵が普通である。だから、自分の部屋に辿り着くまでに鍵を5、6個使うことも珍しくない。そして、鍵を受け取れば、そこはもう我が家同然となる。外でどんなに遅くまで飲んで帰ろうと安心というわけだ。

部屋は20畳くらいある大きさだがシャワーしかない。まあ、慣れればどうということはない。それよりも、見あげるほど大きな窓から外を見下ろせば下には運河と橋が見えて、ヴェネツィアの情緒満点だ。


窓の下の運河をゴンドラが頻繁に通る。時折、歌い手の乗ったゴンドラが通ると、朗々とした歌声がよく響いて楽しい。

夜、自分の部屋のある建物を見上げてみた。右側の4つのアーチの並んでいる窓の上に部屋がある。

2006年01月18日

歴史とみどころ ~アルベロベッロ~

 アルベロベッロ、なんだか舌を噛みそうな名前の町ですが、日本語に訳せば「美しい木」です。なのに、この町の魅力は石を積み上げて作られた円錐形の屋根の家々です。この家はトゥルッロと呼ばれますが、この町の周辺に多く見られるちょっと変わった建物です。アドリア海沿岸の南に位置するプーリア州もまたギリシア人が住んだりしていましたが、この地方に多く見られる漆喰で塗り固められた白壁もギリシア文化の影響でしょう。その後、ノルマンやスペインのアラゴンなどの支配をうけていました。トゥリッリ(トゥルッロの複数形)はこの地方特産の石灰石を板状にカットしたものを積み上げたものですが、かつては壁を漆喰で固めることは許されていませんでした。領主は小作人たちが領内に家を建てることを禁じていたために管理人の見回りがあるとすぐに家を取り壊せるように造ってあったのです。近年ではこの石積みができる職人も少なくなり、田園の中には崩れかかったまま放置されているトゥルッロを散見します。
 トゥルッロの壁は板状の石を積み上げるため必然、分厚いものとなり、もっとも厚い部分では1メートルほどにもなります。そのため、外気の影響を受けることが少なく、夏は涼しく、冬は暖房があればとても暖かい室内になります。トゥルッリの家を宿泊施設にしたアグリトゥリズモを利用したことがありますが、見あげるとドーム型になった天井を見つめているとどこまでも高い空を見上げているような気さえします。アルベロベッロは観光客用のレストランや土産物屋が並ぶモンティ地区と静かな住宅地区、アイア・ピッコラに分かれていて、トゥルッリの不思議な雰囲気を味わうのなら後者の地区ですね。町の人はとても気さくで、話し掛けると家の中まで見せてくれますし、コーヒーをごちそうしてくれる人までいます。プーリアに行ったら必ず訪れたい町のひとつです。


トゥルッリの屋根には独特のマークが漆喰で描かれたりしています。それぞれ家の持ち主が自分の好きなマークを描くのですが、ほぼ写真のようなシンボルマークで、原始的な太陽信仰や木とか地母神信仰から来たものや、キリスト教からきたもの、そして古いギリシア文字にも似た呪術的なマークがあります。


近代的な産業が乏しい南イタリアでは若い人はローマやミラノなど大都会に出て、高齢化が進んでいます。アイア・ピッコラ地区を歩いていると、老夫婦がハーブを収穫してポプリなどを作っていました。

2006年01月16日

アグリツーリズム 「マルヴァリーナ」


 ウンブリア州はイタリアの緑のハートと呼ばれるそうですが、ローマから列車に乗りテヴェレ川沿いに走り、オルテを過ぎた辺りから車窓から見える緑が深くなっていきます。テルニ、スポレート、フォリーニョと進むに従い、車窓からはなだらかな山の斜面にオリーブの茂みが目立ち、その中腹や稜線には小さな街並みや古城が見えたりします。フォリーニョから列車は左へ曲がり、しばらくすると右手にスペッロが見えてきます。エトルリアやローマ時代の名残がある町ですが、最近はおしゃれなワイン・バーなども出来ています。サンタ・マリア・マジョーレ教会のバリオーニ礼拝堂の床に敷き詰められたマヨルカ焼の絵タイルが見事です。この絵タイルも近郊の陶器の町デルータの特産です。列車は右手にスバシオ山を眺めながら進み、やがてアッシージに到着します。
 アッシージは聖人、サン・フランチェスコの生まれた町として世界各国から巡礼者や観光客が絶えませんが、サン・フランチェスコ大聖堂の1階の壁面はジョットーが描いたサン・フランチェスコの生涯のフレスコ画に覆われています。アッシージ近郊の石はピンクがかった明るいベージュなので、その石を積み重ねて築かれた町全体が明るくやさしい印象です。アグリトゥリズモのマルヴァリーナはスペッロとアッシージのちょうど中間の森の中にあるオリーブ農園です。その他、野菜や果物も生産していて、オーナーのクラウディオさんのお母さん、マリアさんが毎日おいしい郷土料理を作ってくれます。また、乗馬や夏には水泳も楽しめるプールもあり、毎年、世界各国からたくさんの宿泊客が訪れています。

Agriturismo Malvarina:
http://www.umbria.net/malvarina


お母さんのマリアさんの料理は海外でも評判。今夜はラザーニャを作って自らサービスしています。夕食が始まるのが夜8時過ぎからなので、昼間はゆっくりと近郊の都市や名所巡りを楽しめます。一品づつの量はかなり大目なので小食気味の人は覚悟して夕食に臨みましょう。でも、ワインは飲み放題だし、おいしいのでいつのまにか全部食べてしまい後でウエストにびっくりするかもしれません。



オーナーのクラウディオさんとお母さんのマリアさん。レストランの厨房の隣にはマルヴァリーナ自家製のオリーブオイルやジャム、ハチミツなどを売っています。オリーブオイルはもちろんのこと、サクランボやイチジクのジャムなど絶品です。朝食にはこれらのジャムなどたっぷり楽しめます。


スバシオ山の中腹に横長に伸びたアッシージからはウンブリア平野を見渡すことができます。春は緑の麦畑の間に赤いケシの花の絨毯、夏にはヒマワリの畑が広がります。

2006年01月13日

アグリツーリズム 「サント・ステファノ」

 アカデミー賞を受賞したロベルト・ベニーニ監督、主演の映画「ビューティフル・ライフ(イタリア語題名、ラ・ヴィータ・エ・ベッラ)」の舞台ともなったアレッツォからほど近い町、カスティリオン・フォレンティーノ。この町にはベニーニも住んだことがあるそうだが、人口3千人ほどの丘の上の小邑ながら、この町の市庁舎前にはフィレンツェのウッフィツィ美術館やポンテ・ヴェッキオを通る回廊の設計者として知られるジョルジョ・ヴァザーリが設計したロッジャがある。
 その町を遠望する南の丘の斜面に、アグリトゥリズモのサント・ステファノの瀟洒な建物とそれを包むオリーブの林が茂っている。オリーブの木々の木陰には青や黄色に塗られた水蜂の巣箱が並び、母屋と離れの建物の周辺には充分に手入れをされたローズマリーやセージ、バジリコ、オレガノ、タイムなどのハーブが香りを放っている。その花々の蜜を求めてミツバチたちが飛び交っているが、サント・ステファノはオーガニックのハチミツやオリーブ・オイル、ワインなどを生産する農家である。
 農園の運営はアントニオと長男のミケーレの仕事で、奥さんのマリネッラはカスティリオン・フィオレンティーノの町中にウェディング・ドレスのアトリエを営業している。しかし、彼女の手料理の上手さは抜群で、基本的には自炊のアパートメント形式の宿だが、少人数で時間があれば、マリネッラの手料理を家族と一緒に味わうことができる。環境の素晴らしさと家族の温かなもてなしで、ここにしばらく滞在すれば、どれほど都会の仕事で疲れた人間でも日々の憂いは消えうせ、心身の健全を取り戻せるに違いない。

Agriturismo Santo Stefano
http://www.agriturismosantostefano.com
日本語代行:italiabussan@libero.it
住所:Loc.Pieve di Chio,78 - 52043 Castiglion Fiorentino (Arezzo)


ミツバチは日に60Kmから80Kmの距離を飛び、巣箱と花の蜜のあるところを往復する。寒さやちょっとした農薬でも死んでしまうとてもデリケートな昆虫だ。長男、ミケーレが最新の注意をはらって飼育するミツバチからは極上のオーガニックのハチミツを分けてもらえる。


サント・ステファノが造っているハチミツはおよそ20種類。定番のアカシアや百花、栗やアーモンド、エリカ、野ばら(ローザ・カニーナ)、ミルトなどの花の蜜のほか、百花などのハチミツに天然のオレンジや野イチゴ、へーゼルナッツのクリームをミックスしたものがある。ちなみに、僕の一番のお気に入りは野イチゴとローザ・カニーナ、そしてメラータと呼ばれる、木の樹液をミツバチが集めた貴重なもの。これらといろいろなチーズに合わせて楽しむのである。

2006年01月10日

居酒屋 「プロセッコ」

 ヴェネツィアにはたくさんの広場があり人々の憩いの場としていつもたくさんの人たちがバールや居酒屋に集まってきます。この店は「プロセッコ(Prosecco)」といいますが、プロセッコと言えばヴェネト州を代表する白葡萄で通常はスプマンテ(発泡酒)に造られますね。コネリアーノヴァルドッビアーデネのふたつのD.O.C.になっていますが、どちらのものも美味しいく僕が一番すきなスプマンテです。特にヴァルドッビアーデネ近郊のカルティッツェのものは秀逸ですが、産量が少ないので日本ではめったに飲めないでしょう。まあ、そんな素敵なスプマンテの名前を店名にしたのが「プロセッコ」で場所は、サン・ジャコモ・デロリオ(San Giacomo dell'Orio)教会のある広場にあります。ほぼ一日中日当たりがいいので、冬でもこの店の外のテーブルに座ってプロセッコを飲むのはとっても気分がいいですね。

日本では太陽が明るいうちにアルコール類を飲むのはちょっと気が引けるようですが、ヴェネツィアでは朝から飲むのが当たり前。特に寒い冬はちょっとお酒を入れて、体を温めてから仕事を始めるというのが日常です。

2006年01月06日

歴史とみどころ ~ペルージャの追憶~

 イタリアの中部にあるウンブリア州「イタリアの緑のハート」とも言われるように、森や緑の丘陵など田園風景はトスカーナと並び美しいところです。ローマからスポレート、スペッロ、アッシージ、ペルージャと列車の旅を続けると車窓からの風景はまさに絵のようで飽きることがありません。僕がイタリアに行こうと思った最初のきっかけは、そのペルージャを描いた石井柏亭という明治・大正時代に活躍した水彩画が描いた絵を見てからでした。
 ペルージャは近年ではサッカーの中田選手が最初に活躍したチームがあるところなので日本でも有名になりましたが、イタリアに興味を持ち、留学してイタリア語を勉強しようと思う人にとっては、外国人大学があることでも有名です。この町の歴史は古く、ローマ以前の先住民族、エトルリア人が大きな都市を築いていました。丘の上にある町のかしこにそのエトルリア人が築いた大きなアーチや城壁が残されています。この写真は石井画伯が描いたところを撮影したものですが、画伯の作品には「エトルリア」という題名が付けられていました。僕はこの「エトルリア」という言葉を聞くと郷愁のようなものを感じます。

ペルージャ大学の前にあるエトルスコ門を上がっていくチェーザレ通りから見える眺め。石井柏亭はこの下の階段から絵を描いていた。上の写真もこの階段からの撮影。

僕は85年まで画家を志していました。77年に初めてイタリアに行って、ペルージャの町を歩き、期待を裏切られない思いで、帰国後もこんな絵を書いていました。これは79年にペルージャの路地を描いたものです。

2006年01月05日

イタリアの犬たち

 みなさん、新年明けましておめでとうございます。イタリアではBuon Anno!と挨拶します。2006年、日本の干支はですね。そこで今日は干支にちなんでイタリアのワンちゃんたちの写真でお話します。イタリア人はけっこうな犬好き。日本ではマンションとかではペットを飼うのは禁止というのが少なくありませんが、イタリアでは友人の家へ行ったりすると犬がいたり、エレベータでシェパードなど大型犬を連れた人と一緒になることもしばしば。

 でも、しつけはしっかりされていて、シェパードなどいっけん大きくて恐そうなのに案外とおとなしい場合が多いですね。まあ、知り合いのワイナリーにはなんど行っても僕を覚えていなかったり、誰にでも吠えたり、ときには噛んだりするシェパードがいますが、それはちょっとお馬鹿なのでしょう。飼い主の奥さんだけにしか懐いていない様で、いつもキッチンで一緒にいます。いつだったか、そのお母さんが女子サッカーチームのゴールキーパーで試合にでる夜があって、僕が息子達に夕飯を作ってやることになり、そのお母さんのエプロンをしていたら、いつもは僕に寄り付きもしないのが、見るなり嬉しそうな顔をして寄って来たのです。最初はエプロンの匂いでお母さんと思ったのでしょうが、僕が振り向いたらびっくり、そしてなんか間違えた自分が照れくさそうに、そして寂しそうにうなだれて離れていきました。やっぱりアホな犬でした。

 イタリアでは犬を可愛がるけど、犬、イタリア語ではCANE(カーネ)といいますが、辞書を引いてもいい言葉には使われていませんね。よく使うのが、Porco Cane!こんちくしょう!って感じです。諺では「犬を愛さない者は人も愛さない」というのもあります。まあ、それほど犬は人に身近な動物ですね。番犬、牧用犬、盲導犬など人を助けますし、猫には出来ないことをやってくれますからね。他には「女房と鉄砲と犬は人に貸すものではない」という諺もあるようですが、さてどういう意味でしょう。犬は室内で飼われていると自分が人間だと思っているように見えますね。可愛がれば人間ほど裏切らないでしょう。子供の頃、家の事情で犬は飼えなかったので、近所の犬を借りて散歩しました。飼い主の人も僕が散歩させてくれるのを喜んでくれましたから、その犬は僕を飼い主同然と思って懐いてくれましたね。イタリアではよく窓やベランダから顔を出している犬を見かけますが、この写真のように花が飾られたりして絵になるシーンが多いので、写真も楽しいです。「窓辺の犬」シリーズだけでも写真集が作れるくらいです。

犬は飼い主に似ると言われますが、この写真を見るとそう思えますね。街中のスナップでこのようなシーンはよく見かけます。50mm~100mm程度の中望遠のレンズの自然な遠近感で撮るのがいいでしょう。飼い主よりも犬に気づかれないように、素早く、さりげなく撮りましょう。

動きの速い犬を撮影するときには、しばらくその動きを見て、行動のパターンやタイミングを把握してから撮りましょう。フィルムはISO400程度の高感度を使用するとか、絞りをF2.8から4程度でできるだけ早いシャッター速度で撮れるように準備します。露出は真っ白な犬をアップで撮るときにはプラス補正、真っ黒な犬ならマイナス補正です。ただし、アップで撮る場合ならです。背景が暗い場合も若干のマイナス補正、明るい場合はプラス補正です。補正度合いはカメラによって違いますから、事前に試して下さい。


これは僕が一番気に入っているイタリアの犬の写真です。リグリア州のサンタ・マルゲリータ・リグレという町の駅で撮影したものですが、犬と人間の温かな交流、ちょっと居眠りをしている男性に寄り添う犬にちょっと哀愁も感じます。この人はどんな人生を旅をしてきたのでしょうか。そんなことを思いつつ撮りました。


篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 2004年11月、ヴェネツィアで写真展(www.toshi-shino.com)を開催した。

2009年07月

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