ヴォルテッラの大地


ピサを出て国道439線を東南へひた走ること1時間。途中の車窓から見える左右には麦畑、ヒマワリ畑の平野が続き、起伏のなだらかな丘の上には農家がポツンと建っていたりする以外、目立ったものは目に入りません。道がようやく上り坂になり始めると突然、前方の小高い丘の上に街並みが現れました。ヴォルテッラ(Volterra)です。イタリア語で”Volare”は飛ぶという意味で、”Terra”は大地、つまり”飛んでる大地”、丘の上の街並みを見ているとそう思えます。紀元前7世紀頃、この地にはすでにエトルリア人が住んでいて、大きな都市と文明を築いていました。ヴェラトリ(Velathri)と呼ばれていたそうです。
トスカーナの大地と言えば、葡萄畑にオリーブの林という風景が定番なのですが、この国道沿いで葡萄畑を見たのは1,2箇所、それもピサとヴォルテッラの中間のペッチョリあたりでした。後でヴォルテッラ市内にあるリストランテの名店、Del Ducaのオーナーから聞いたのですが、ヴォルテッラ周辺は葡萄の栽培には適さない土地なのだそうです。彼は大のワイン好きで、彼は最近になって初めてこの地でワインを作っていてこの秋には飲めると自慢していました。しかし、ワインはエトルリア時代から造られていたし、ヴォルテッラにはアウグストゥス帝時代のローマ劇場 もありますから、ワインも欠かせなかったはずです。その当時はこの地でもワインが造られていたのか、あるいは近隣から輸送されていたのでしょうか。沢山のアンフォラ(ワインや水を入れる素焼きの壷)も出土しています。 ヴォルテッラの町はエトルリアとローマの時代に基礎が築かれた城壁によって囲まれていますが、丘の端の方には断崖絶壁が土を剥き出しにしています。その今にも崩れそうな崖の上にはサン・ジュスト教会が建っています。この断崖は砂と粘土質で崩れ易く、これまでにもエトルリアの建築物や地下墳墓などが消えていったそうです。
イタリア半島はいたるところこのような地質の大地があり、大雨になると流れてしまう現象は避けられないようです。カランキと呼ばれる雨水で侵蝕された斜面はロマーニャ地方でも見ました。いつ訪れても変わらないようなイタリアですが、数百年と言うスパンでは大きく変わっていますね。崩れた崖の稜線を色鮮やかに染めるエニシダの花を眺めながら、諸行無常をここでもまた感じました。
紀元5年から20年にかけてのアウグストゥス帝時代の劇場跡。右上の列柱が並んだところには紀元4世頃と思われる浴場施設があった。沈み行く西日が半円形の劇場に大きな影を落としていました。

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コメント (2)

vinoeformaggio:

篠さん、こんにちは。

ヴォルテッラ・・・、私にとって深い思い出のある町です。
というのも、初めてイタリアに行ったとき、
短い時間でしたが、(私にとって)本当の意味でひとりぼっちで過ごした町がここヴォルテッラでした。一日目、町を歩いて(無知のため、勝手に)怖い思いをしたのを覚えています。

そこで初めてしっかり覚えた言葉が、Onbra della seraでした。
とても美しいフォルムと、それを言い当てた美しい響きを持つ言葉だなぁ・・、と思ったのです。
(先日、日曜美術館でジャコメッティが特集されていました)

昨年4月にもちょっとだけ立ち寄りましたが、行く度に、いろいろな時代と、顔を見せてくれるいい町だと感じています。

篠さんの撮った、Onbra della sera di Sinoには脱帽です。
機会というのはそれがなんだか知っているからこそ目の前に現れるのかもしれませんね。

旅人しのちゃん:

Vinoeformaggioさん、いつもコメントありがとうございます。PISA視察旅行の前後、いろいろとばたばたしてました。旅も中身が詰まった感じで、ヴォルテッラの町を自由に散策する時間があまりなかったり、宿泊したホテルが町の中心から離れていて、ちょっと物足りなかったですね。でも、旅はやっぱり独り気ままがいいですね。もしも訪れた場所のことを理解したかったら。最近、気ままな一人旅が減ったせいか、自分の写真、撮れてないなぁと思うことがあります。先週、アンリ・カルチエ・ブレッソンの映画を見に行きましたが、常に初心忘れず自分の写真を撮りたいですね。だいたいにおいて、全ては先に心の中にあるのです。画家はそれを描き、写真家はそのシーンに出会った時、すかさずシャッターを切るだけです。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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