イタリアで一番のカントゥッチ

トスカーナの小さな町、サン・ミニアートにイタリアで一番と言ってもいい、カントゥッチを作っている店があります。カントゥッチはイタリア・ブームに乗って日本にもいち早く紹介され今や日本製のコピー商品まで売られていますが、中世にトスカーナで誕生した伝統的なビスケットです。名前の語源は、Canto(歌)の縮小辞で、砂糖、卵、バターにアーモンドや干し葡萄、アニスの種などを練りこんだ小麦粉を焼いたもので、歯で噛んだ時にカリッと軽やかな音が出ることから”小さな歌”、Cantocci=カントッチ”が”Cantucci=カントゥッチ”となったそうです。”サン・ミニアートのカントゥッチ”はパン職人の家系の5代目となるパオロ・ガッザッリーニさんの経営する”Il Cantuccio di Federigo=イル・カンツッチョ・ディ・フェデリーゴ” に受け継がれ、この町の名産品として知る人ぞ知る、カントゥッチのナンバーワンなのです。フェデリーゴとは12世紀にこの町も支配していた神聖ローマ帝国の皇帝、フェデリーコ一世、通称バルバロッサのことですね。

カントゥッチは通常、食事の後のデザートとしてこれもトスカーナ特産のヴィン・サントという甘口のワインと一緒に味わいます。かなり固くて歯が丈夫でないと痛い目に合うお菓子なので、しばしばヴィン・サントの入ったグラスに漬けて少し柔らかくしてから食べます。しかし、パオロさんのカントゥッチは小さな子供や歯の弱いお年よりでも食べられる固さで、わざわざヴィン・サントに漬ける必要もないし、コーヒーや紅茶と一緒に楽しめるビスケットです。ビスコット・ディ・サン・ミニアートとも称されますが、BiscottoはBis=2度、Cottoは焼く、調理するという意味で、長期保存を可能にするため充分に乾燥するまで焼いたのでそう呼ばれるのです。

パオロさんのカントゥッチはラズベリーやチェリー、干しイチジクが入ったものなどのバリエーションがありますが、製法はあくまでも伝統に則ったもので、化学的な 食品添加物や着色料などは一切使用していない天然素材100%です。パオロさんのモットーですね。 彼の店を訪れたとき、パネットーネの試食をしました。パネットーネとはクリスマスの時期が近づく10月頃にイタリア中で焼かれる甘いパンですが、パオロさんはこれを もちろん100%天然素材で作り、それが1年くらい経つとどうなるか試しているそうです。そして、8ヶ月ほど経過したものを食べたのですが、とても良い香りでちっとも変質していません。カビも生えていません。一週間ほど前にアメリカから来た観光客がどうしても食べてみたいと言うので、切ったのがあるからと、僕も食べてみました。カットされてから1週間ほど過ぎているので、その部分はやや乾燥してみましたが、噛み締めるとなかなかいい味です。僕はパネット―ネが好きで、その時期にはいくつも買って翌年の5月頃まで朝はパネットーネとカフェ・ラッテを楽しむのですが、こんな上質のパネットーネを毎朝食べたいですね。すでに友人のインポーターにも紹介したので可能性はあると思います。

店に立つパオロさん。店内には酒屋さんかと思うほど、様々なワインやグラッパなどが並んでいますが、ワインはほとんどがお菓子に合わせるパッシートなどのデザート・ワイン。



これが”カントゥッチ・ディ・サン・ミニアート”、見ているだけでも「カリッ!」と音が聞えてきそう。でも、固すぎて歯が立たないものが多いのですが、これなら子供からお年寄りまで食べられます。



お店の地下はカンティーナ(酒蔵)になっていて数千本のワインや自家製のリキュールが保存されています。オレンジやレモンの皮を漬けたものでも一味、二味違うパオロさんの秘法があり、サクランボの種を漬けたリキュールなど初めての味で魅力的でした。自分の仕事に誇りを持ち、こころから楽しんでいるのですね。

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コメント (8)

hitomi:

イタリアで一番美味しいCANTUCCINI!? 聞き捨てならない!
CANTUCCINI は有名なPRATOの物も含め、ちっとも美味しくないと思っていた私はSESTO FIORENTINIの、とあるBARのものを食べて目から鱗。
美味しいものは何でも作りたい私は、それを真似て自己流にCANTUCCIを作ったのです。食べ比べて見て、私の方が香ばしいと自画自賛(いいえ、友人達も贔屓目に異口同音)
SAN MINIATOのFEDERIGOですね、早速試して後日報告します。うーーーん、楽しみ!

旅人しのちゃん:

Hitomiさん、他にも「イタリアで一番おいしいCantucci」がありますよ。ワイナリーのCastello Di
Trebbioの奥さんが作ったもの。これには自家製のサフランを使っていていい香りです。イタリアには何故か「イタリアで一番おいしい・・・」、「世界で一番おいしい・・・」ものが溢れていますね。ナポリでピッツェリアが3軒並んでいて、右端のピッツェリアが「ナポリで一番美味しいピッツェリア」と大きな看板を出したら、負けじとばかり、左端のピッツェリアのオヤジが「イタリアで一番美味しいピッツェリア」と看板を出しました。困ったのは真中のオヤジで、一晩、うーんと唸って考えて、翌朝、「入り口はこちら!」と大きな看板をだしたとさ。お後がよろしいようで・・・

hitomi:

castello di Trebbioの奥様って確か外国人(イギリス人?)だった様な・・・
そうか、これは研究の余地あり! 
今度FirenzeにいらしたらSESTOのBAR(PASTICCERIA)に行きましょう!
ここのPANETTONEは今まで食べた中で一番美味しい。

ナポリのpizza屋の話って本当?篠さんが勝手に作った話じゃないの?出来すぎ!
PIZZAもそれほど好んで食べてはいなかったけど、FIRENZEにおいしいPIZZA屋を発見。
週に1度は行きたくなる。

噺家しのちゃん:

ええ、まいど馬鹿馬鹿しい終わりにお付き合いを頂きありがとうございます。ナポリの話の元ネタは最近は正蔵師匠などと呼ばれているお方の父上、林家三平師匠がラーメン屋が三軒ありましたとやった小話のパロディです。これをナポリに行ったときにイタリア語でやったら大受けで、ピッツァが只になりました。でも、三平師匠もたぶんユダヤの小話とかからもらったのではないかと思います。非常に知的な笑いでございますから。Trebbioの奥さんはスイス系ですね。公爵夫人でもありますが、とても気さくです。写真を撮ると、私はブルッタ、ブルッタと言いながらも嬉しそうでチャーミングです。このブログでもすでに紹介しています。SestoのPanettoneを食べに是非是非行きましょう。Firennzeに美味しいピッツェリア?サン・マルコのところかなぁ・・・、95年ごろはPalazzo
Pazziの前あたりだったか、ブーホちゃんのカメリエーレが楽しいところによく行きました。

噺家しのちゃん:

前のコメントで「お笑い」が「終わり」になっていましたねぇ、ごめんなさい。
本文中でもIl Cantuccioの読みがカンツッチョになってました。言うまでも無く、カントゥッチョです。本文中の写真にあるコリエーレ・デラ・セーラ紙(日本で言えば読売新聞級の新聞)のコピーでは「タルトの王様はどこにいる?カントゥッチョの中に」とパオロさんの記事を載せています。

高橋節子:

   篠さま
 楽しいコメント 見せていただきましたけれど 誠に申しわけございませんが 何処でお目にかかったのか 全く記憶がございませんのです。でもこれからもよろしくね。私も73歳のおばあちやんですので 大分記憶がにぶいのです。失礼いたしました。

高橋節子:

   篠さま
 楽しいコメント 見せていただきましたけれど 誠に申しわけございませんが 何処でお目にかかったのか 全く記憶がございませんのです。でもこれからもよろしくね。私も73歳のおばあちやんですので 大分記憶がにぶいのです。失礼いたしました。

旅人しのちゃん:

73歳のおばあちゃま、人生の達人ですね。僕もこのところずっと、アルチュールハイマーです。ヴェネツィアのハリーズ・バーでマティーニを飲みすぎたせいでしょうか・・・
だんだんと同じことを繰り返して言うようになりました。でも、そのほうが気持ちはいつも新鮮でいられるようなきがします。飽くことなく、日々を楽しみ、退屈しないのが一番です。
こちらこそ、今後ともよろしくお願い致します。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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