イタリアの靴産業

6月のピサ県視察旅行の時に、靴の製造工場を訪れました。サンタ・マリア・ア・モンテというところで、ピサからアルノ川に沿って北上し、サン・ミニアートの手前を左に入ったところにあります。工業団地の地域といって雰囲気での中にある、東京なら大田区あたりにある町工場のビルといった感じの建物の前で、バスから降りた視察団もいったいどんな靴の工場に案内されるのだろうかと訝しげでした。
さて、ピサ商工会議所の担当が呼び鈴をならすと、とてもチャーミングがお嬢さんがお出迎えです。さっそく、玄関口で名刺を交換しながらの挨拶で、彼女はカルロッタ・バキーニ(Charlotta Bachini)さんというマーケティング・ディレクターであることが分りました。
この製靴工場は”GARDENIA”という会社で頂いたパンフレットの社名の下には”100% MADE IN ITALY”と記されています。近年、イタリアの製造業は靴でも衣服でも、中国の工場と提携して生産しているところが少なくなく、北イタリアにはひとつの産業都市の存続問題になっているところもあります。

第二次世界大戦が終結してまだ10年にもならない、1952年、フィレンツェのピッティ宮殿の”サラ・ビアンカ(白亜の間)”で、イタリア・ファッションの歴史的なイベントが誕生しました。パルチザンの活躍でなんとかナチス・ドイツに対して戦勝国となっても、国内は日本と同様に、戦争によって多くのものを失い、経済的にもどん底の状態にあったイタリアはなんとかこの状況から脱出しようと国民全体がもがいていました。
イタリアは昔から様々な分野の職人達が家内工業や兄弟会社などを運営し、堅実な経営によって、魅力的な製品を生んできました。もちろん、戦争の最中では、こうした職人達も戦地に行かねばならず、帰国しても材料すらなかなか手に入らない貧困の日々ではありましたが、こうした職人達の技術こそイタリアを再興させる鍵ではないかと気づいたのが、フィレンツェの実業家、ジョヴァンニ・バティスタ・ジョルジーニでした。
その頃、ファッションと言えばフランスのパリで、アメリカの大金持ちたちはパリ・コレクションの大得意先でした。そこで、ジョルジーニはイタリア各地の仕立て職人や製靴職人など、ファッションに関わる様々な分野の職人たちを呼び集め、フィレンツェのピッティ宮殿でのファッション・ショーを企画したのです。そして世界中のジャーナリストたちを招待し、イタリアの職人達の技術とデザイナーの優れたセンスによって創造された新しいモードを世界に広めることに成功したのです。
ジョルジーニには初めから成功する自信がありました。イタリアには芸術の町に生活する環境、芸術に直接触れている、つまり改めて美術教育をしなくても、イタリア人には芸術的センスが備わっており、それらがモードに発揮されれば必ずイタリア独自の製品を作ることができると確信していました。イタリアらしい陽気で奇抜なデザインをパリコレと比較しておどろくほど低価格で発表するとバイヤーたちはこぞって飛びつきました。
イタリアのあらゆる産業を支えているのは家族経営による小規模で、独自性に富んだデザインと職人の高い水準の丁寧な仕事です。それは現代にも受け継がれ、また日本をはじめ世界の注目を集めるシステムなのです。イタリアの靴といえば、”フェラガモ”のブランドがすぐに浮かびますが、イタリア中に素晴らしい靴職人がいます。
また、近代的な機械を導入したとしても、イタリアが誇る優秀な職人の手仕事が基になっているため、他の国のものとは一線を画した製品が作れるのです。”100% MADE IN ITALIY”にはそうしたイタリアの製造業の誇りを感じますね。
GARDENIA:http://www.gardenia-srl.it


イタリアの靴といえば、トスカーナで生産される皮革は世界のトップクラス。そして、イタリア人の芸術的センスから生まれる色彩も日本ではなかなか真似の出来ないもの。そこには長い伝統が息づいているからです。
GARDENIA社の靴のメインは女性用です。男性用の靴のデザインは何年経ってもあまり変化はないので作りやすいのですが、常に流行に左右される女性用の靴の生産は毎年新しいデザインを創らなくてはなりません。足にフィットしやすい柔らか素材と製法が当社の特長だそうです。


それにしても、無骨な感じの機械の説明をするのがチャーミングなお嬢さんというのがいかにもイタリア的ですね。視察団の男性ジャーナリスト全員の顔が緩みっぱなしでした。 これはこの秋のモードのひとつです。異なった素材の皮を組み合わせるところも、GARDENIA社の特長のようです。



男性用の靴はモカシンタイプがメインです。形はオーソドックスですが、素材や色などは豊富です。女性用のカジュアルな靴では、やはりモカシンタイプが得意のようで素材のバリエーションの多さや色彩の鮮かさ、美しさに目を惹かれますね。

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コメント (2)

sorellapiccola:

しのさん。こんばんわ。
私がイタリア語を始めるきっかけとなったのは、大好きな靴をイタリアで店員さんと話を
しながら買いたいという理由からです。
日本にはなかなかサイズが合う靴が無く本当に苦労します。。。
イタリアの靴は色、デザイン、履き心地、そしてなによりも店員さんのアドバイスがとても
いいですね。ディスプレイも素敵で見ているだけでも楽しいです。(閉店後も素敵なのです!)
靴を買いにイタリアへと気軽にはいきませんが、また靴だけでなくイタリアファッションを楽しみに
イタリアへ行きたいですね~。

旅人しのちゃん:

SorellaPiccolaさん、イタリア語勉強のきっかけ、映画みたいなシーンを思い浮かべました。イタリアの店員さんはなかなかお薦め上手、その上、確かなセンスも持ち合わせているので、アドバイスが生きていますよね。日本の店だと今、これを売らなければとお店の都合に合わせているだけの場合が多いですが、イタリアではちゃんとお客さんのことを考えてくれますからね。もちろん、イタリアにだって無愛想、いいかげんな店はたくさんあるのですが、それもまた出会いの運。運が悪かっただけなのに、イタリア全体を悪く言う人に時々であいますが、イタリア語を勉強したくなるほど素敵な体験SorellaPiccolaさん、ぜひまたイタリアでお洒落を楽しんで下さい。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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