アスティから始まった切り売りピッツァ

イタリアで一番最初に切り売りのピッツァを始めた店アスティにあるんだ。トリノに行く前に寄ってお昼をそこで食べて行こう」、カネッリのルペストルで葡萄の収穫を手伝っていたレナートが嬉しそうに言う。ピッツァ、それも切り売り?なんでピエモンテでもグルメの町として知られるアスティでわざわざ切り売りのピッツァなんだろうと半信半疑でしたが、店の名前もズバリ”LA PIZZA” とピッツァに定冠詞を付けたりして本気を感じます。

店内を一目見て納得しました。ピッツァが誕生したのはもちろん、ナポリ。でも、店の壁には1939年に撮られた写真が飾ってありました。

ただ、売っているのはファリナータというヒヨコ豆(イタリア語ではCeca,複数形でCeci=チェーチ)の粉を水で溶いて塩を少し入れただけの極めてシンプルなクレープでした。


イタリアにはポレンタと言って、トウモロコシの粉をお湯で溶きながらマッシュポテトのようになったのをそのまま食べたり、練ったものを型に入れて、固まったら四角く切って、ちょっとオーブンで焼いてから肉や魚料理の付け合せにして食べるものがあります。日本人にはあまり美味しく感じられないみたいですが、ファリナータはトウモロコシの変わりにヒヨコ豆を使っているので、栄養価も高く味付けも塩だけですが、飽きのこない健康食といえまね。


人生、何があってもくよくよしない、ファリナータの正統な食べ方?よりおいしくなるそうです。

週に何度も来ると言う近くの銀行に勤めているお嬢さん。

トウモロコシの原産は南米ですが、ヒヨコ豆もイタリア原産ではなく、インドからエジプトなどアラブ世界を経由して来たものです。すっかりイタリアの代名詞になっているトマトも原産は南米だし、ジャガイモもそうですね。インドのイチジクなんて言うのもありますが、これは団扇(うちわ)サボテンの実で、コロンブスがアメリカ大陸を発見したときにインドと勘違いしていたから、イチジクに似た南米が原産のサボテンの実がそう呼ばれたのです。
こうした食べ物がたどった道程を考えると、ピエモンテの小さな町に切り売りピッツァの老舗があったとしても不思議ではありません。ファリナータからスタートしたロベルトの先祖が、いつしか切り売りのピッツァも売り始めて、それが今ではアスティ市内に2軒の店になって、売っているピッツァのバリエーションも70種類だそうです。1号店は1953年、アルフィエリ大通り(Corso Alfieri) に誕生し、このペッレッタ通りに”LA PIZZA”2号店が出来たのは1984年です。もう、22年も経っているのですね。これぞイタリアのファーストフードです。グルメ料理もいいけれど、こうした切り売りピッツァやパニーニやエミリア・ロマーニャのピアディーナなどイタリアには美味しくて楽しめるファーストフードがいろいろあります。ちょっとヘビーな食事が続いた時にはありがたい存在でもありますね。

アスティが生んだ文豪、ヴィットリオ・アルフィエーリの像が立っている彼の名前をとった広場周辺が町の中心。

ポルティコ(アーケード)が多く雨の日の散歩も楽。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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