イタリアはどこへ行っても美味しいものがいっぱいあるので、ついつい食べ過ぎてしまいます。せっかく旅行に来たのだから、このレストランもこのオステリアも食べてみたい。それはヴェネツィアに来ても同じ。観光客をうるさく呼び込むリアルトやサン・マルコ広場付近の店には当たり外れがありますが、地元の常連が行くオステリアやバールならハズレはありません。でも、昼も夜もフルコースで食べていたらどんなに美味しい料理でもギブアップしてしまうでしょう。そんな時にはバールでパニーニやトラメッツィーノ程度にして、夜はフルコースでたっぷり食べるというふうにすればよいのです。でも、バールだからと言っても美味しいものは食べたいですよね。そこでお薦めのバールのひとつがここ “エリオ、レ・デル・トラメッツィーノ”。長い名前ですが、“トラメッツィーノの王様、エリオ”という意味で、トラメッツィーノはイタリア語でサンドイッチのこと。店主のエリオさんはその王様だと看板にしている店です。
日本でも最近はパニーニという名称が一般的になってきましたね。チェーン店のコーヒーショップでもパニーニが売られています。昔から細長いパンにソーセージを挟んだホットドックとか、焼きそばや餃子を挟んだりした、いわゆるおかずパンがあって学校帰りに食べながら帰った想い出があると思います。イタリアではそれをパニーニと呼んでます。パンは細長いものや、丸いもの、フランスパンのように皮が固く焼かれたものや、ホットドッグやハンバーガーのパンみたいなものなどいろいろとあります。また、日本のサンドイッチのようなスタイルのものもあって、これは“間に挟んだ”という意味のトラメッツィーノと呼ばれています。

(左)いつも出来たてのパニーニ(右)手前のお皿に巻き逗子のようなのがピッツァと呼ばれている。後ろのお皿がトラメッツィーノ(サンドイッチ)。
パニーノもトラメッツィーノも中に挟むものは似たり寄ったりですが、生ハム、ボンレスハム、サラミ、茹でたほうれん草、ゆで卵、チーズ、トマト、アーティチョークの酢漬けなどが一般的。ヴェネツィアは海辺の町なので、茹でた小エビやイワシのマリネ、ツナなど魚介系のものもあります。僕のお気に入りは小エビとゆで卵や白アスパラガスとツナのトラメッツィーノです。エリオの店にはミラノ風の薄い牛カツを 挟んだものや薄く焼いたピッツァ生地でロールにしたものもあります。僕は朝食をバールで摂るのが好きで、特に冬や春にはスプレムータと言って、オレンジやグレープフルーツなどの生絞りジュースでビタミンCをたっぷり摂りながら、トラメッツィーノを食べてから、バーカロ巡りをします。最近はヴェネツィアの定宿が出来ましたが、仕事の関係であちこちのホテルに泊った場合でも朝食はエリオのバールまで来ます。とにかくイタリアではバールで“常連”になっていろいろと情報を仕入れたりすることも大切なのです。新聞を読まなくてもバールで話しながらいろいろなニュースも聞けますし、突然の鉄道や水上バスのストライキの情報なども朝のバールでゲットできます。エリオは魚市場のところでバールをやっていました。この店には今年の春からで、それまでにはフランコという口ひげの細面のおじさんが店長でした。フランコもすごく感じがよくて仲良しだったのですが、その頃からいるのがパオロという青年です。フランコの頃からパニーニやトラメッツィーノはパオロが作っていました。でも、彼には別の才能もあるのです。

(左)右からエリオ、バルバラ、パオロ。(右)モダンな店内の内装

(左上)常連が切れ間無く来る
(上)ピッツァというよりもエミリア・ロマーニャのピアディーナに似ている、ロール・サンドとパニーニ。
(左)ハムとゆで卵、ツナとアスパラガス、アーティチョークにつなとゆで卵。その他、小エビとゆで卵などボリューム満点。
ある時、彼が「トシ、あとでこのサイトを見て」とメモをくれました。日本に帰って、それを思い出して見たら、なんとイタリアでも有名なトトのグループにも参加したりする現役のロック・ギタリストなのです。彼のサイトからはその演奏も楽しめますので、皆さんも彼のサイトを訪ねて下さい。(http://www.paolozambon.com)
イタリアのバールではこんな出会いがあるのも常連になる楽しさ
ですね。イタリア人にとって、バールはコミュニケーションの場として日常生活に欠かせないものですし、誰もが行きつけのバールがあります。日本でも行きつけの喫茶店に行って世間話をするとか、その内に店主に相談事に乗ってもらうとかありましたが、最近はどうなのでしょうね。あちこちにあるチェーン店のコーヒー店ではマニュアル通りの応対でおしまいで、世間話も出来ないし、隣り合わせの客と言葉を交わすなんてこともほとんどないでしょう。しかし、イタリア人の一日はそういうコミュニケーションから始まるのです。日本でいくらイタリアを真似たバールを作ってもそういうコミュニケーションの場として活用されなければ、本当のイタリアンバールとは言えませんね。

(左)生ハム、ルッコラ、モッツァレッラチーズ。ボンレスハムにほうれん草とゆで卵。パニーニの種類もたくさん。
(右)「トレメッツィーニの王様、エリオはここ!」と書いてます。


コメント (10)
はじめまして!
ヴェネツィアの魅力にはまっております。
記事を楽しく読ませていただいてます。
過去3度は夫婦で訪れておりますが、年明けに、初めての一人旅を予定しています。
街歩きが中心となり、食事は軽めにしたいと思っていますので、バーカリやこの記事のようなトレメッツィーニでと考えています。
本当は自分で探索したいのですが、短い滞在ではそうもいかず、よろしければこちらのお店の場所を教えてください。
いきなりのお願いで恐縮です...
投稿者: gelato | 2006年11月30日 23:44
日時: 2006年11月30日 23:44
コメントありがとうございます。このエリオのバールは、もともとBar Alle Bandeと呼ばれていました。リアルトの水上バスの停留所からサン・リオ通りに入り、突き当たったら右に行きます。橋の手前右手にあり、とても分り易いです。そのまま橋を渡り左へ、左へと歩けばサン・マルコ広場です。バールはリアルトとサン・マルコ広場の中間くらいでしょうか。バールのひとつ手前の路地を左に入った左手には、ヴェネツィアの歴史書やガイドブックなどの老舗の書店、フィリッピがあります。ぜひ、この書店にも訪れてください。店主のフランコがいたらよろしくお伝えください。その書店の手前右手にはCipporatoという宝石デザイナーの素晴らしい職人の工房もあります。ぜひ、ヴェネツィアの路地歩きを満喫して下さい。
投稿者: 旅人しのちゃん | 2006年12月01日 01:51
日時: 2006年12月01日 01:51
ご丁寧な道案内、ありがとうございます。
宿はサン・マルコ付近なので、行けそうです。本屋さんと宝石工房にも是非!
私のあやしい(笑)独学イタリア語で、ご挨拶してきます。
ヴェネツィアの職人さん、私も毎回訪れるガラス細工のお店がありまして、親子3代ガラス職人という彼のお話を聞きながら品物を選ぶのはとても楽しいです。ヴェネツィアの人々は自分の人生の楽しみ方が上手だなぁ、と思います。
投稿者: gelato | 2006年12月02日 00:04
日時: 2006年12月02日 00:04
ヴェネツィアの人々に限らず、イタリア人は人生の楽しみ方が上手ですね。カトリックの宗教的な考え方・・・死んでもまた復活するみたいな思いが、気持ちを楽にさせるのでしょうか。神様は、生きているうちに、大いに人生を謳歌せよと言っているのだと。仏教では来世は必ずしも人間になれるかどうか分りませんから、空しさはより強いのでしょうか。まあ、僕の来世はシチリアあたりでオリーブの木になれたらいいな、と思ってますが。
投稿者: 旅人しのちゃん | 2006年12月02日 01:47
日時: 2006年12月02日 01:47
ご一緒したときの記憶が蘇ってきます。しのさんのご紹介されるところは、本当に美味しいところばかり。さらに、美味しいだけでなく、なんか違った視点がいつも隠されていますよね。美味しい+α。。ここのバールは、とにかく、内装のセンスのよさにびっくりさせられました。小ざっぱりしていて、それでいて趣が漂ってくるんです。伝統を感じる街の路地から店の中に入ったときの、ギャップが、目の奥にまだ残っています。
投稿者: hirakun | 2006年12月02日 08:10
日時: 2006年12月02日 08:10
あ、自分で場所調べたつもりが、違うお店をチェックしてました!私の宿からごく近いところなのでとても嬉しいです。この界隈は魅力的な路地があるようで、それも楽しみです。
投稿者: おーぱすわんわん | 2006年12月02日 12:41
日時: 2006年12月02日 12:41
Hirakun,懐かしいでしょ。来年はシチリアに行きますか?それともトスカーナとウンブリア?今度は家族連れでどうぞ!
おーぱすわん様、このバールに近い宿、ルナ・バリオーニ?では、パオロやエリオによろしくお伝えください。それから、フィリッピ書店のフランコに会えたら写真を撮って来て下さい。実は9月に会った時に激痩せして誰だか分らないほどだったのです。何でも奇病にみまわれて血液を全て入れ替えたとか。20日に発売される本には狸みたいに太った写真が載ってますが・・・ヴェネツィアの生き字引みたいな友人です。いろんな情報をもらって下さい。
投稿者: 旅人しのちゃん | 2006年12月03日 07:39
日時: 2006年12月03日 07:39
お友達の病気、とても心配ですね。お加減が良くなっていることを願っています。
さて、ルナ・バニオーリ・・・一度は泊まってみたいホテルですが、高嶺(高値)の花です。小さい、庶民的な宿のお世話になります。週末都内某所のオステリアでシェフとヴェネツィアの話をしました。こちらで教えていただいたお店の名前も出てきて嬉しかったです。
投稿者: おーぱすわんわん | 2006年12月04日 14:51
日時: 2006年12月04日 14:51
おーぱすわん様、ダ・ピントのある広場からリアルト橋に抜ける路地の右手にMascariというコーヒー、紅茶、香辛料などの店があります。この店でいつも胡椒などを買ってくるのですが、ヴェネツィアの東西交易の歴史を反映させて文化を感じます。日本では得られないような香り豊かなスパイスをお土産にして下さい。100gづつ小分けにしてもらえば、軽いものですからちょうどいいです。
投稿者: 旅人しのちゃん | 2006年12月06日 12:46
日時: 2006年12月06日 12:46
旅の楽しみがまたひとつ増えました。是非行ってみます!ありがごうとざいます。
投稿者: おーぱすわんわん | 2006年12月07日 17:04
日時: 2006年12月07日 17:04