「春のプーリアを旅する」

イタリアを旅するにはどの季節が一番いいですか?という質問をよく受けます。訪れる場所にもよりますが、年間、押しなべてお勧めできるのが3月から6月上旬あたり、つまり早春から初夏ですね。この時期、僕は毎年、オリジナルのツアーを企画してあまり多くない人数でイタリア各地を訪れます。今年は3月24日から4月1日まで9日間の旅を企画しました(問い合わせ:(デル・ソーレ・イタリア/電話:03-3401-6130 E-mail:italia@fortuna.ne.jp)。訪れる町はファサーノ近郊のアグリトゥリズモに泊まりながら、アルベロベッロオストゥーニ、マルティーナ・フランカなど家々の壁が漆喰で白く塗られた白亜の都市群や南のバロック美の町として知られるレッチェ。そして隣の州、バジリカータにある世界遺産の洞窟住居群の街、マテーラです。また、途中、マテーラとターランとの間にあるカステッラネータというところで名門ワイナリーも訪ねて、プーリア特産のプリミティーヴォやネグロアマーロのワインもたっぷり味わいます。

 プーリアはイタリアでも最大と言われる農産物の豊かなところで、オリーブの生産高もイタリアで一番、新鮮な野菜や肉の料理はもちろん、アドリア海に面した州なので、魚介の美味しさも素晴らしく、グルメには絶対にはずせないところですね。オレキエッテという耳たぶのようなパスタを真っ赤に熟したトマトソースに爽やかなバジリコの葉をちぎって添えただけのシンプルなパスタが格別に美味しく感じられるし、最近、日本にも入ってきたブッラータというチーズ、これはモッツァレッラの中に生クリームを入れた鮮度が命のとてもクリーミーなチーズですが、これもプーリア特産です。ターランとのムール貝もイタリアでは有名ですし、生ウニもプーリアは有名な食材ですね。そんな美味しい料理とワインを味わいながら、アドリア海沿岸に細長く伸びたこの州の端から端まで旅するのはやっぱり春が一番です。

 このブログでは以前にもプーリアを紹介していますが、僕が一番好きな街はオストゥーニですね。歴史を遡れば千年前にギリシア人が築いたのが始まりと言われていますが、初めてこの町に鉄道で着き、小さな駅舎からオリーブの森の向こうの丘に積み重なる白い家々の光景は今までにない感動を覚えました。東京も先週、少しだけ雪に覆われましたが、雪に覆われた白い風景はとても美しいですよね。初めて見たオストゥーニの町は全体が白い角砂糖を重ねたような感じで、あたかも雪に覆われた町並みを見るかのようでした。それがまたプーリアの抜けるような青空、海原のような緑のオリーブの森の間に輝くように見えたのです。大都市の市内バスと同じ色ですが、サイズはミニの巡回バスに乗って市内へ向かいます。オリーブ園を囲む石垣の間の道をゆるやかに登るにつれ、白亜の石壁がだんだんと迫ってきます。やがて、バスはやっと通り抜けられる細い道を抜けて市内に入りました。窓の外を見るとバスはもちろん小型の車すら通れないような細い路地がいくつもあります。後でホテルに荷を降ろしてから市内を散策してみると、これらの路地は町の下から渦巻き型に上っているメインの通りから枝状にいくつも作られ、それがまさに迷路を構築しているのです。大きな建物の下はアーチになったり、トンネルの中で三方に分かれていたり、とても複雑でどんなに歩いても飽きることがありません。もちろん、写真に撮るのにこれほど楽しいことはありませんでした。
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オストゥーニ遠望
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オストゥーニの迷路
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オストゥーニの大聖堂の薔薇窓

ロコロトンドという町も丘の上に作られた町で、周囲はオリーブと葡萄の畑に囲まれています。外からの町並みは王冠のように城壁が円形に築かれていますが、ロトンドは丸い、ロコは場所を意味する言葉で、すなわち”丸い場所”というのがこの町の名前です。この町で作られるヴェルデーカ種とビアンコ・ダレッサーノ種から作られる白ワインはDOC認定でプーリアを代表する優秀なワインです。
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ロコロトンド、バスの車窓から
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ロコロトンドの街で

 そのロコロトンドからアドリア海沿いにずっと南下したちょうどブーツの形をしたイタリア半島の踵の底にある町がオートラントです。海はギリシアと向かい合うイオニア海に面し、その水の青さはモルフォ蝶の翅のようです。この町の大聖堂はプーリア州で一番、ロマネスク調のシンプルなファサードからはその大きさは感じないでしょうが、内部がまた素晴らしく、床には”生命の木”と命名されたモザイク画に覆われ、また見上げる天井も重厚にして繊細な装飾が施されています。
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オートラントの大聖堂
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オートラントの大聖堂内部
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オートラントの海

 ロコロトンドから北へ少し行ったところにファサーノという町がありますが、この町も市内には白漆喰の壁の家々で構成されています。オストゥーニと同じく町はオリーブの林に囲まれた丘の上にありますが、この辺りの地形の特徴である石灰岩の大地のあちこちに大小の洞窟があり、ビザンチン時代に隠遁修道士たちが描いた壁画が残っていたりします。
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ファサーノ近郊の洞窟
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ファサーノ近郊の洞窟壁画1
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ファサーノ近郊の洞窟壁画2

 この地方ではマッセリーアと呼ばれる荘園が多く見られます。そのマッセリーアを観光客が宿泊できるように活用したアグリトゥリズモがとても人気でイタリア人ばかりでなく、世界中の人々が利用しています。素朴で泊まるだけの設備のところもあれば、立派なレストランもあって美味しいプーリア料理を味わえるところもあります。3月のツアーでも始めの3泊をファサーノ近郊にある“サラミーナ”というアグリトゥリズモに宿泊しながら周辺の都市巡りを楽しみます。このマッセリーアは17世紀の貴族、サラミーナ家のものだったのを現在のオーナーが受け継ぎアグリトゥリズモとして運営しているもので、オリーブオイルなどの農産物を生産し、また宿泊客も買うことが出来ます。また、広々としたレストラン設備もあり、郷土料理の講習会やオーナーの趣味でもある音楽会も開催されるなど、文化的な活動にも役立っています。
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マッセリーア・サラミーナ
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プーリアの新鮮野菜
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マッセリーア・サラミーナ付近で

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コメント (4)

はじめまして。なんとなく検索していて偶然みつけました。
ヴェネツィア在住です。・・・よって、あこがれです、南イタリア。春~初夏が一番いいのは、イタリアはおそらくどこも一緒ですね。プーリアのオレキエッテ、あれは春が一番おいしい、ほかの季節のは本物じゃない、と出身者に力説されたことがあります。(手打ちなので小麦粉の関係でしょうか?)
ヴェネツィアにもよくおいでになるようですね。いつかbacaroでご一緒できたらうれしいです。

fumie様、
ヴェネツィア在住ですか?いつから?プーリアの小麦粉、ナポリのピッツァも使ってますね。お菓子などにも0番、00番と使い分けて。そうそう、サン・マルツァーノのトマトだってプーリアのフォッジャ近郊が一番生産高が高く、それを缶詰に加工して世界に輸出されてます。魚市場前のDa Pintoには奥に僕の写真が飾られたギャラリースペースがあります。店主のジョヴァンニを訪ねて下さい。26日から3月6日まで取材ですから、どこかで会えますね。

あら?お返事を書いたつもりでしたが、消えてしまっていたようです。
私は2001年秋からヴェネツィアにおります。
しのさんは26日からヴェネツィアですか、では、その間、できるだけバカリを徘徊するようにします・・・(?)
どこかでお会いできたら、その節はどうぞよろしくお願いいたします。

fumieさん、2001年秋からというともう7年近いですね。このところの、ユーロ高は日本からだと大変ですが、現地在住の方にはいかがでしょう?イタリア人の友人たちも物価高に喘いでいますが、こちらから取材する方も身を削る思いです。では、どこかでOmbraを!

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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