
パレルモの大聖堂
今回から4回に分けてシチリアのショート・トリップをしましょう。一昨年、ソニーマガジンズ発行の「Gokutabi」でも南イタリア特集をしましたが、この雑誌、トスカーナとマルケの編も合わせて在庫がなく、アマゾンでもプレミア付きでなかなか入手できないと読者の方からも問い合わせがあります。そこで、このブログで再びシチリアを歩いてみましょう。

パレルモの市庁舎前広場とプレトリア噴水
シチリアは紀元前より様々な民族と文化が交差した島で、タオルミーナ、カターニャ、シラクーサ、アグリジェントなどがある東側はギリシャの影響が強く残り、州都のパレルモやチェファルー、マルサラ、シャッカなどがある西側はアラブやノルマンの文化が色濃く残っています。フェニキア人やギリシア人が到来する以前からもシカーニ人やシクリ人などの先住民族がいました。
ローマ人はシチリアを穀物倉庫のように帝国の食料供給の大地として統治してきました。ゲーテが「シチリアの大地の豊かさは6月までに全ての農産物の収穫を終えてしまう」と書いているほどで、その大地の豊かさを求めて、ローマのみならず、ノルマンやゲルマン、フランス、スペインと様々な民族と国家の支配を受けてきました。それだけに、多様な文化がシチリア各地に興味深い足跡を残していて、飽きることのない旅を楽しませてくれるのです。
今やイタリアを代表する農産物であるワインやオリーブはギリシア人が、パスタや現代では北の特産と言われている米はシチリアに上陸したアラブ人が伝え、イタリア半島に渡り、それがまたヨーロッパにも広がっていきました。ギリシア人はシチリアをエノトリア・テルス、すなわち、ワインの大地と称したほどですから、ギリシア人が移植したネロ・ダヴォラ種やインゾリア種など多種の葡萄から作られる魅力的なワインがあります。

パレルモのサン・ジョヴァンニ・デリ・エレミティ教会
ワインと並び、オリーブオイルもトラパニ周辺のノチェラーラやラグーサ周辺のトンダ・イブレアなどとても美味なオリーブを生産しています。また、アラブの影響が残る料理も魅力的で、トラパニの魚介のクスクスやお米が素材の丸いコロッケ、アランチーニなど海の幸、大地の恵みがあればこそ味わえるものがふんだんです。
初めてシチリア島に上陸したとき、潮風と太陽から沖縄に似ているなと思いました。平均気温32度、常に風速6メートルくらいの潮風が吹いているからです。もっとも、沖縄には一度しか行ったことがありませんが、シチリアにはもう6,7回は行っています。シチリア人曰く、この島はギリシャ的な東側とアラブ的な西側では人々のメンタリティも違うそうです。確かに、人をもてなす親しみ易さはアラブ的な西にあるように感じます。東側の大都市、カターニャの人はシチリアは島国だけど、自分たちはギリシャ的な文化を素地にしてインターナショナルな精神を持っていると言います。
シチリアを周遊したら、そんな都市ごとにことなる人々のメンタリティの違いにも興味を持って歩いたら面白いと思いますね。おしなべてイタリアは風土の違いで人々の個性の違いも明確に出るところですから、建築や美術ばかりでなく、土地の人たちとの交流があって初めて旅も楽しめるのだと思います。
さて、まずスタートはパレルモですが、州都だけに見所も豊富です。中でも12世紀に建てられた大聖堂や赤い丸屋根がエキゾチックな雰囲気を漂わせるサン・ジョヴァンニ・デリ・エレミティ教会などノルマンの時代の建築は圧巻です。また、パレルモ市庁舎があるプレトリア広場の噴水はルネッサンス時代にフィレンツェの彫刻家が作った大噴水があります。その向かいにあるホテル、デル・ソーレはかつてアメリカの世界的な歌手で俳優のフランク・シナトラがアメリカ・マフィアのボスの命を受けてコルレオーネのボスに面会を求めここに宿泊したというエピソードが残るところ。

マッシモ劇場

チェファルー遠望

チェファルーの大聖堂
マフィアを有名にした映画「ゴッド・ファーザー」のラストシーンを盛り上げた舞台がマッシモ劇場です。その他、パレルモにはリバティー様式の装飾が美しいホテル、ヴィッラ・イジェアや膨大なワインを誇るエノテカ、ピコーネなど眼も舌も満喫させるものがいっぱいです。

チェファルーの海岸
パレルモから是非訪れたいのがチェファルーです。サファイア・ブルーやエメラルド・グリーンの美しい色彩の変化を見せるティレニア海を望む町で、大聖堂はノルマンのルッジェーロ2世によって建てられました。南国的な明るい雰囲気を漂わせる建築と内部のビザンチン様式のモザイク画の装飾も他の教会に比べとても明るい光に満ちたもので、アッシージのサン・フランチェスコ大聖堂やヴェネツィアのトルチェッロ島にあるサンタ・マリア・アッスンッタ大聖堂とならんで大好きな教会です。
チェファルーは細い路地が碁盤目のように交差し、それがまた斜面に作られていて南国的な素朴で明るい雰囲気とあいまって町歩きも楽しく、美味しい魚介料理のレストランやアラブ風料理の店、ジェラートがとても美味しいカフェ・バールなどパレルモから日帰りで楽しむだけでもシチリアに来たら必ず行きたいところですね。町を見下ろす丘に登ればシカニ人の築いたディアナ神殿やスペイン人の城跡があり、ここから一望するティレニア海の美しさは生涯忘れられないものになるでしょう。
チェファルーの浜辺 |
チェファルーの入り江で |

海を臨むリストランテ Al Porticciolo(チェファルー)

チェファルーの浜辺
チェファルーの入り江で