シチリアの旅・その2


サンブーカ・ディ・シチリアとオレンジ湖

シチリアでどうしても訪れたい見所にエリチェがあります。標高700余りの丘サン・ジュリアーノの上にある小さな町で、眼下にはトラーパニとその周辺に広がる塩田を眺められます。トラーパニではジェラートとミネラル・ウォーターは欠かせない真夏でもここまで上がると一挙に涼しさを感じます。ヴィーナスの神殿と呼ばれる遺跡とその後に建てられたノルマンの城や聖母マリアを祀る14世紀建立のマトリーチェ教会など、半日もあれば十分に観光できる小さな町ですが、石畳の広場や路地が美しく、ことに朝と夕暮れは北のヴェネツィアを思わせるロマンティックな雰囲気になります。


サンブーカ・ディ・シチリアの眺望


エリチェのウンベルト広場

エリチェの石畳 エリチェの公園の彫刻

エリチェの丘を下りトラーパニの町に入ると漁港と都会的な喧騒に包まれますが、港近くの市では名物のマグロの燻製やからすみなどの海産物が売られています。魚介のスープをたっぷりかけて食べるクスクスもトラーパニ名物ですね。少し南下したところにはサリーネと呼ばれる塩田が広がり、点在する風車や白く輝く塩の小山の風景はとてもフォトジェニックです。時間がゆるせば塩田からボートに乗ってモツィアの小島に渡ればフェニキア人から始まりギリシア人やローマ人の遺跡を見ることができます。博物館には考古学的にも貴重な彫像を観賞できます。


エリチェからトラーパニを望む

トラーパニの次に訪れたいのが、アラブ人がアッラーの港と称したのが町の語源となったマルサラです。ここはイギリス人のジョン・ウッドハウスが18世紀にスペインのシェリー酒やマドラ酒からヒントを得て造った酒精強化ワイン、マルサラの発祥地です。また、ドンナフガータという日本でもよく知られたワインの名門もあります。また、考古学博物館には紀元前250年前後のものと言われるフェニキア人の船がほぼ原型を留めた姿で発掘され展示されています。


トラーパニの塩田

トラーパニの要塞

ギリシア遺跡と言えば、シチリアで最大の遺跡がセリヌンテです。紀元前6世紀ころの都市と神殿は大地震とローマ人によって破壊されたそうですが、海を臨む平地に広がり、真夏は照り付ける太陽、冬は冷たい風に曝され、観光もよほど神殿好きでないと飽きるかもしれません。僕としてはパレルモとトラーパニの途中にあるセジェスタのギリシア神殿が好きですね。丘の上にぽつんとひとつある神殿の佇まいがいいのです。その上まで登ると先住のエリミ人の居住跡があります。


カステルヴェトラーノの田園風景

セリヌンテの海

セリヌンテから内陸に入って行くとトスカーナを思わせる美しい丘陵地帯が広がりますが、そのような風景の大地では当然、葡萄が良く実り、美味しいワインが作られています。プラネタやファッツ・ワイン、プリモ、モンテ・オリンポ、フィッリアート、セッテソリ、ミチェリなど数えればきりがないほどです。プラネタやモンテ・オリンポがあるサンブーカ・ディ・シチリアはアラブ人が最初に築いた街で、今も路地を入るとアラブ風の迷路のような住宅街があったりして小さいながら魅力的です。周辺の田園風景も美しいし、オレンジ湖と呼ばれる人工の湖からサンブーカの町やその背景にあるアドラーナの山などシチリアの大地の美しさを満喫できます。


モンテ・オリンポのワイン


アラブ語で熱い水という意味がある温泉の町、シャッカは陶器でも知られていますが、そのシャッカとセリヌンテの間にあるメンフィ郊外にテヌータ・ストッカ・テッロというアグリトゥリズモ(農園の宿)があります。オーナーのリッリ・バルベーラさんはシャッカの高校の教師もしていますが、代々受け継がれた農園では葡萄やオリーブ、カルチョーフィにオレンジ、レモン、ざくろなどの農産物や羊、豚なども飼っていて、近年に完成した宿泊施設や腕の良いシェフがいるレストランなど一押しのアグリトゥリズモです。ここで生産される葡萄は近郊のワイナリーに売られていましたが、最近は自分のところでも美味しいワインを作り出したと聞いてます。


テヌータ・ストッカテッロのオレンジ


カッフェ・ジリオのマドンナ

時間があれば行ってみたい町にジュリアーナがあります。サンブーカから10キロほどのところにある丘の上の小さな町ですが、フェデリーコ2世が建てた城や教会があります。フェデリーコ2世は鷲がことに好きだったので、この城を上空から見ると鷲が羽を広げた形をしています。また、城に登ると町の奥の対面にある教会と向き合うように街造りがされていて建築学的にも興味深いところです。


ジュリアーナの城から

セジェスタのギリシア神殿

まあ、こんな情報は日本ではほとんど知られていませんが、実はモンテ・オリンポのワインを作っている友人、ジョヴァンニの奥さんがまだパレルモ大学で建築を学んでいた頃、その卒論のテーマにしていて、この町や城の写真撮影を依頼されたことがあるのです。また、近郊にあるカステルヴェトラーノにはワインのコルクを製造する小さな工場がありますが、近年、シリコンやプラスティックの栓が増えていますが、良質のコルク材さえ使用すれば、やはりワインは天然のコルクがよく似合いますね。そのコルクを作っているファミリーと知り合ったのもモンテ・オリンポとの出会いからでした。


テヌータ・ストッカテッロのレストランスペース

テヌータ・ストッカテッロの寝室

丘の上の町、ジュリアーナ

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コメント (5)

eda:

篠さんこんにちは。篠さんのベネチアの散歩道の本でみっちり勉強して先週ベネチアに行ってきました。
ドロゲリアマスカリや帆船の模型の店、ブラーノ島ではダ・ロマーノで絶品のスカンピリゾットを食べましたよ。リアルト橋そばのビーズの店でネックレスも買いました。ベネチアを離れる朝、オーナー夫人が日本人のお菓子のお店に7時に行ったのですが近所のおばさんに「そこは8時にならないと開かないよ」といわれ、自慢のお菓子を買うことができなかったのがちょっと残念でした。
はじめてのベネチアでしたが、本当に心に残る、良いところでした。ありがとうございました。

eda様、こんにちは!早速拙著「ヴェネツィア」がお役にたったようで、とても嬉しいです。Majerに朝7時は流石に早すぎましたね。はじめてのヴェネツィアだそうですが、次回は是非、”冬のヴェネツィア”もお楽しみ下さい。来年2月頃に僕が案内するツアー企画を予定しています。

REI:

こんにちわ、そして初めまして。
トラーパニ在住のREIと申します。
以前からステキなイタリアの写真を拝見しておりましたが、今回のシチリアの記事、そして、おっ!トラーパニ!エリチェ!サリーナ!に思わず反応してコメントをしてみました。
エリチェもトラーパニもこうして篠さんの写真でみると、なんだか別の街のような気さえしてきます。しかし、エリチェは石畳といい石で積み上げられた壁といい、、、何度行っても飽きない街です。夏はトラーパニ市民が夕涼みに登るため、夏の夜のエリチェは大変賑わっています。夏のエリチェもステキですが、冬の霧のエリチェも雰囲気があってとっても美しいです。
それでは、これからも美しい写真、楽しみにしております♪

REIさん、Buon Giorno!
トラーパニにはいつ頃からお住まいですか?トラーパニ風のクスクスが大好きで、シチリアに行くと必ず食べます。ScopelloのBaglioにあるトラットリアのが一番お気に入りです。日本でパスタを茹でる時はもちろん、トラーパニの塩田の塩です。実は11月24日から30日までシチリアを駆け足ツアーします。エリチェにも1泊しますから、時間が合えば現地で会いましょう!冬の霧に包まれたエリチェ、本当に素敵ですよね!では、またコメントを下さい。

REI:

篠さん、Buongiorno~!
トラーパニには、2005年より住んでいます。11月にはエリチェにいらっしゃるのですね!時間が合えば、是非是非お会いしましょう!日程は↑のメールアドレスにご連絡いただけると嬉しいです。
では、これからもどうぞ宜しくお願い致します。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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