船のある風景

写真を撮ることを生業にしている中で鉄道や航空機、船舶など乗り物を専門に撮影している人たちがいます。私は専門にするほどではありませんが、眼に入るとすぐに撮りたくなるのが船と自転車です。船といっても大型客船のようなものではなく、漁師の使う小船だったり、ヴェネツィアのゴンドラのように歴史がそのまま美しい姿になったような、造形的な面白さと色彩や形などに親しみが湧くような船舶です。

北イタリアのオルタ湖畔を訪れた時、すでに一週間も降り続き増水していた湖面にカラフルなボート何艘か繋がれていました。その視線の先にはサン・ジュリオ島がすこし霞んで見えます。これが日本の湖に浮かぶ和船であればもう少しわびさびとより雨の冷たさを感じてしまうところでしょうが、イタリア的な明るい色彩のボートが絵画的な魅力を放っていました。

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北イタリア、オルタ湖のボート

一目見て感動したのが、リグリア州の東リビエラ海岸の町、カモッリの漁港です。カモッリはCasa di Moglie(妻の家)というのが語源だそうで、漁港を囲む家々がカラフルに彩られているのは、沖から帰る船の漁師が自分の家はどこかとすぐに見分けがつくために施された色彩だそうです。それと同じ発想でカラフルなのがヴェネツィア近郊の島、ブラーノの家々です。これらは何度訪ねても飽きることのない光景を見せてくれて、絵画や写真の題材にはことかかないのです。カモッリの隣にはゴージャスな別荘地としてつとに知られるポルト・フィーノがあります。この入り江を見下ろす丘からの眺めもまた絵画そのものです。この写真ではさらにフォギーという霧がかかったようなソフトな描写になるフィルターを使用して撮影しました。

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リグリア州カモッリの漁港

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高級リゾート、ポルトフィーノのヨット

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ブラーノ島のカラフルや家々とボート

船の撮影でもっとも楽しめるのはやはり水の都ヴェネツィアです。ゴンドラが多く停泊しているところでは水面に映りこんだシルエットと青空などのコントラストが面白いし、船に立って漕ぐ姿もいいです。種類は豊富で、かつてはブラーノ島などの潟の葦の茂みに入り込み鴨を撃つために作られたス・チョポンという船や大人数で近年は競技用に使われることがおおいカオルリーナという荷運びなど万能的な船など様々です。船はその環境に適した用途に合わせて作られているので、ヴェネツィアのような浅瀬の潟では底が平らな船が多く、ゴンドラも造船所などで見れば船底がまっ平らであることがよく分かります。

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ゴンドラのシルエット

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ヴェネツィアのゴンドラ造船所と競技用のゴンドラを漕ぐ人

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ス・チョポンという鴨猟に使われたのがオリジナル

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ヴェネツィアのカオルリーナ

環境と言えば、ヴェネツィアからアドリア海へ出たところにリド島と並んでペッレストリーナという島が細長く延びています。ここは遠浅の海の中に漁師が作業する小屋が転々と建てられ、夕暮れともなると小船やそれらの小屋のシルエットがなんともいえぬ旅情をそそる風景を見せてくれます。近年のヴェネツィアでも珍しくなったのは帆かけ舟ですね。サン・ミケーレ島、アメリカの詩人、エズラ・パウンドや作曲家のストラヴィンスキーなどの墓があり墓地の島として知られるところですが、その島を背景に一艘の小さな帆かけ舟が浮かんでいた。おそらく舟遊びで釣りを楽しんでいたのだろうが、背景のサン・ミケーレと霧に包まれた雰囲気が不思議な静けさを感じさせていました。

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ペッレストリーナの漁師のボート

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墓地の島、サン・ミケーレ島と帆掛け舟

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コメント (1)

ぐら姐:

篠さん、お久しぶりです。
溜息が出るような美しい写真の数々ですね。
船、そして水って本当に美しいと思います。
そしてそれをニュアンスのある撮り方でよりいっそう美しく撮る篠さんは、さすがプロですね。

年末にカモッリに行くのが、楽しみになりました。

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篠 利幸

1977年初渡欧、画家としてしばらく活動後、イタリアの写真を撮り始める。書籍、雑誌等で写真と文筆の両面で活動、「田園のイタリアへ!アグリトゥリズモの旅」(NTT出版)、「トスカーナの青い空」(東京書籍)など著書多数。 新ブログスタートしました→http://blogs.yahoo.co.jp/fotombra

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