
私の住むホノルル・ダウンタウンには、葬儀場(モーチュアリー)が3つもあります。ちょうどヌウアヌ・アベニューとククイ・ストリートの角に3つ集まっていて、うちのコンドミニアムの窓からもバッチリ、眺めることができます(とても良い眺め……)。北の窓からは葬儀場。東の窓から見えるのは、世にも美しいエメラルドグリーンの海。これぞホントの極楽暮らしですよね!

これらの葬儀場には外部から牧師や僧侶を呼んで葬儀を執り行うためのホールと、霊安室、それに遺体を火葬にふす施設があり、それぞれ霊柩車も数台持っておられるようです。
え? ハワイにも霊柩車があるのかって? それがあるんですよ。写真のように、ライトバンをひと回り大きくしたような感じで、一見してそれがすぐ霊柩車とはわからないかもしれません。私も日頃さんざん見ていただろうに、教えてもらうまで霊柩車とは知りませんでした。ただライトバンにしては、棺を入れられるよう後部がさらに長く、しかもその部分が丁寧にレースで包まれていることぐらいが特徴でしょうか?
ハワイに住んで、私も早や15年。何度かお葬式に出たけれど、日本とは随分システムが違って、面食らうこともありました。今日はそのあたりを、ご紹介することにしましょう。
まず、ハワイのお葬式は趣向たっぷり。唄あり、フラあり、スライドショーやビデオショーありで、日本の結婚披露宴も顔負け?です。もちろんどんちゃん騒ぎではなく、式は静かに進行します。が、職場の仲間がピアノの弾き語りをしたり、孫一同が集まって合唱したり。いろいろな趣向で死者を讃え、生涯を記念するのがハワイのお葬式です。
そして何よりの違いは服装ですね! 葬式で黒を装う、という習慣はハワイにはありません。強いてドレスコードを挙げるならば、アロハ・ウエア。男性はアロハシャツ、女性はムームーが多いでしょうか。色は赤でも黄色でも、何でもOK。特にハワイアンのお葬式はカラフルな感じです。ジュエリーも「真珠に限る……」なんてルールはもちろんナシ。みなハワイアンジュエリーをジャラジャラつけたまま、葬儀に出席しています。
それもここ数年は、故人の家族がお揃いルックでお葬式に出るのがトレンドになっています。中でもマヌへアリイというリゾートウエア・ブランド(日本でもフラダンサーに大人気とか)が好まれているそう。マヌへアリイのアロハやムームーと言えば、南国らしいハデハデ・プリントで有名なんですけどねえ。しかもハワイアンのお葬式なら、お棺の上にはマイレレイなどたくさんのレイが……。お棺に横たわる故人も(菊ではなく)レイできれいに飾られ、女性なら、ハクレイ(頭につけるレイ)をつけていることもあります。
もっともこれがアメリカ本土になると、日本同様、グッとシリアスに。参列者の装いも黒一色。内容も弔辞くらいで、唄や踊りもナシ! やっぱりハワイのお葬式はポリネシアの影響が色濃い、アメリカでも特別のお葬式なようです。
長くなってしまいましたが、最後に今でも印象に残るあるお葬式の話をして、終わりにすることにしましょう。
一昨年のこと。娘のクムフラ(フラの教師)のいとこが亡くなり、葬儀に出席することになりました。家族で会場のチャペルに到着すると、なぜ~か賑やか。まるでパーティみたいな雰囲気なんです。見るとチャペルの入り口で、クムフラが数人のバンドを引き連れてウクレレをかきならし、ハワイアンソングをうたっていました。
しかもクムフラの衣装は、オレンジと緑のド派手なムームー! 髪には、よくクリスマスの飾り付けに使うチープな金や赤のキンキラの飾りが輝いています。まるでパーティの余興に呼ばれたかのようなすごい装いで、場の雰囲気を盛り上げて?いました。
日本人が見ればド肝を抜かれると言うか、大ひんしゅくを買うこと間違いないシーンでしょうネ。でもそんなお気楽な様子が、私には嬉しかったのです。悲しいお葬式のムードを和らげてくれ、ずいぶん気分が楽になりました。
……というのは、その故人(30代の女性)は、出産直前の臨月のある日、妊娠絡みの事故で急死。本当は、あまりに悲しいお葬式だったんです。赤ちゃん誕生という最高にハッピーなイベントのはずが、一転お葬式になってしまったわけで、周囲の嘆きもひとしお。それがクムフラのド派手な衣装と軽快なハワイアンミュージックで、どれだけ救われたことか。クムフラだって、ホントはお棺にすがりついて泣きたかったはずです。それでも悲しみを押し殺してウクレレを弾き続ける彼女。最期は楽しく、いとこを送ってあげたかったのでしょう。あっぱれなハワイアン魂でした。
そして葬儀の中盤のこと。うちの娘も含めた十数人の子供が、フラを踊ることになりました。お揃いのムームーを着て、祭壇の前に並んだ子供たち。クルリと参列者に背中を向けると、お棺に向かってフラを踊り始めました。うちの娘もよちよちと、チビながら懸命に踊りました。う~ん。お葬式のフラって、客席にではなく、死者に向かって踊るものなんですね。
「フラは神に捧げられる神聖な踊り」
そんなことを改めて実感させられた、なんともハワイアンなお葬式体験でした。


コメント (6)
ハワイの葬式なんて初めて知りましたよ。考えたこともなかった。
こういった行事には、お国柄が出ますよね。
「雑学大好き」とても面白いです。
次回も期待してますー!
投稿者: じゃんぐる | 2005年10月29日 14:17
日時: 2005年10月29日 14:17
ジャングルさん、温かいお言葉、有難うございます。ハワイのお葬式、悲しみ一色に彩られないのがいいですよね。それでもやっぱり、涙は滝のように流れますが……。
投稿者: ホクラニ桜子 | 2005年10月29日 14:33
日時: 2005年10月29日 14:33
私もハワイで結婚式は、数々、出席しましたが、お葬式の事知りませんでした。
ハワイアンカルチャー、不思議、大変興味深く、これからも更新楽しみにしています。
投稿者: lokoloko | 2005年10月30日 04:54
日時: 2005年10月30日 04:54
ロコロコさん、コメントありがとうございます。そのうちにおめでたいイベントについても書きますね。不思議世界のことについても、いろいろシェアしたいです!
投稿者: ホクラニ桜子 | 2005年10月30日 09:05
日時: 2005年10月30日 09:05
友達から以前ハワイのお葬式の様子を聞いたことがあります。なかなか想像がつかなかったけれど、桜子さんのお話しを読んで、ふーむ。。。なるほど。。。と思いました。
お葬式というと、もうこれが当たり前のようになってしまっているけど、(黒装束)私は楽しく、それでいて故人を心から想う気持ちが一番大切だと思うのです。
私はハワイの人達の素直で素朴なところがとても大好きです。
投稿者: マヒナ | 2006年01月14日 10:11
日時: 2006年01月14日 10:11
マヒナさん、ALOHA!
ハワイの葬式、ホント自由に趣向をこらすことができて、涙&黒一色じゃないところが救われますね。
本文では書けなかったのですが、お葬式の後に食事がふるまわれたり、または葬式前にコーヒーや手作りクッキー、ペストリーの軽食が出されたりもしますよ。
食べたり、飲んだり、楽しく過ごす努力をしたり、ハワイのお葬式は日本のお通夜と少し似ているかな? でもハワイでは、アルコールは出さないかも……。今のところ、経験ありません。
投稿者: ホクラニ桜子 | 2006年01月14日 11:10
日時: 2006年01月14日 11:10