
皆さんは[ニイハウ島事件]という歴史的事件を、耳にしたことがありますか? これは真珠湾攻撃に参加した日本人パイロットがニイハウ島に不時着し、島民を恐怖に陥れた事件なのですが……。すでに日米の様々な本の中でふれられているので、ご存知の方も多いかもしれませんネ。今回は先日の真珠湾の話題のエピローグとして、ニイハウ島事件について、少しご紹介しましょう。
カウアイ島近くに浮かぶニイハウ島は、ロビンソン一家所有の小島です。1872年、ハワイ王国5代目君主のカメハメハ5世から1万ドルで譲り受けて以来、ロビンソン一家のプライベートな島として機能しており、ロビンソン一家の許可なくしてはハワイ州知事ですら上陸できません。今はハワイアンばかりが200人ほど住んでいて、電気もガスもない、昔ながらのハワイアンな生活を続けています。もちろん言葉もハワイ語のみ。「禁断の島」「ミステリアス・アイランド」などと呼ばれる所以ですネ。
1941年12月7日、真珠湾を爆撃した零戦のうち1機が、エンジントラブルのため、このニイハウ島に不時着。パイロットの西開地大尉は軽いケガを負い、当初は住民の手厚い看護を受けていました。ところが、あるハワイアンが軍の機密書類とピストルを飛行機から盗み出したことがわかって、ひと悶着!
何せ文明の利器とは遮断されているニイハウ島のことです。零戦が不時着した時には、まだ真珠湾攻撃のニュースすら伝わっていなかったそう。ですが島一番のインテリのハワイアンが状況を察し、書類などを盗み出したのだとか。結局、西開地大尉は、当時島で働いていた日系2世の原田氏(カウアイ島生まれですが日本語ペラペラ)を味方につけ、武器を集めてハワイアン・ファミリーを人質に立てこもり。書類の返還を求めました。そして最後はそのハワイアンに殺されてしまう……というのが、事件のあらましです。
ちょうど真珠湾攻撃50周年が近づいていた1991年のある日。この事件について書かれた本を貸してくれたのは、前回にも登場した日系2世の男性ライターでした。彼は原田氏と同じカウアイ島出身の日系2世。そんなことから、アメリカ人でありながら大尉に味方した原田氏(最後に自殺してしまいます)には、いろいろ感じ入るものがあった様子。そこで私にぜひ読んでみるようにと、写真の本を貸してくれたのでした。彼の友だちの中には、「この本を僕は5回読んだヨ」なんて言う日系のお年寄りなどもいました。
どうやらニイハウ島事件は、二つの祖国?を持つハワイの日系人の複雑なメンタリティを、妙に刺激した事件だったようです。ハワイ生まれのアメリカ人でありながら、零戦パイロットと運命をともにした原田氏に、自らを重ねあう日系人も多かったのかもしれません。在ハワイの日本人として、とても興味深い歴史的事件なので、ちょっとだけ書いてみました。
ところで、事件の中で零戦パイロットを殺したのは、ベン・カナヘレというハワイアンです。彼の孫とは、数年前、ハワイアンの教会、カワイアハオ教会で知り合うことになりました。ニイハウ島で生まれ育った彼(でも英語もペラペラ)は、今は海軍のエンジニア。カワイアハオ教会の信者さんの紹介で知り合い、あれこれニイハウ事情など聞いたりしていた私です。当然、ニイハウ島事件の話題もたびたび出てきました。
ところが当初、くだんの男性は「零戦のパイロットを殺したハワイアンは、僕のおじいさんなんだヨ」なんてことは、一言も言わなかったんですよね(当たり前?)。ですから、ある日ほかの信者さんに、彼のおじいさんとニイハウ島事件の関わりを聞いた時は驚愕しました。……確かに彼の苗字はカナヘレです。でもニイハウにはたくさんカナヘレさんがいるのかと思って、気にもしなかった私。それが、「あの」ベン・カナヘレさんの直孫だというのですから……世間は狭いものですネ。いえ、ハワイが狭いということでしょうか。
ちなみにベン・カナヘレは、戦後、アメリカ政府から勲章も受けたほか、彼を讃える? 唄というのもあるのだそう(ハワイ語か英語かは聞き忘れました)。ぜひ一度、聞いてみたい。そう思いませんか?


コメント (5)
コメントと言うか、ご存知でしたら教えていただきたいのですが・・・
私、ボランティアで視覚障害の方に本を読んでいる者です。
今、「真珠湾の真実」ロバート・B・スティネット著 文芸春秋 と言う本をテープに吹き込んでいるのですが、西開地一飛曹の読み方がわかりません。にしかいちしげのりさん、日系人の方ははらだよしおさんで良いのでしょうか? もしご存知でしたら教えて下さい。
なお、この本の訳者によると、二人は、島民を傷つけるつもりは無かったので、家に火を放ち自決したらしい。スター・バレティン紙の戦って殺されたという記事は戦意高揚のためのものでは、と言う訳注があります。
投稿者: 小口佳子 | 2006年01月27日 00:44
日時: 2006年01月27日 00:44
小口さま、立派なボランティアをなさってるんですね!
スミマセン、西開地さんの読み方ですが……。今、手元に例の英語の本がなくて確証がないのですが、
http://www.townhall.com/opinion/columns/michellemalkin/2004/08/10/12647.html
で今、チェックしたところ、ニシカイチ・シゲノリ、原田さんはヨシオさんおようですね。
ところで、2人が自決した、という説があるんですね? 日本人としては、その説の方を信じたいですね~。ただ、ベン・カナヘレが3度銃で撃たれた、それで西開地に飛びかかった、という説があり、それもなんかリアルで……。真相は藪の中ですね?
投稿者: ホクラニ桜子 | 2006年01月27日 18:05
日時: 2006年01月27日 18:05
早速お返事いただきありがとうございます。助かりました。
本自体が、ルーズベルト大統領は真珠湾奇襲を知っていたが、欧州戦争に参加するよう国民を納得させるため、米太平洋艦隊を犠牲にした(新造艦は避難させていた)と言うものなので、対アメリカと言う流れの中では自決説をとりたくなります。(そういうことを暴こうとする所はすごいすが)
私ハワイには行ったことが無いですが、好戦的な土地柄には思えないので、後の人の思いが入ったりとか、軍部や政治家に利用されていろいろな話が出来ているのでしょうね。
お塩の話とか面白そうなので、テープが仕上がったら他の記事またゆっくり読ませていただきますね。
投稿者: 小口佳子 | 2006年01月28日 23:09
日時: 2006年01月28日 23:09
小口さま
お役に立てて嬉しいです!
私も「真珠湾の真実」、読んでみたくなりました~。読んでみようかしら。私も実は、「ハワイはアメリカ参戦のため、犠牲になった」という説に大賛成です……。
では、きっとブ厚い本で大変でしょうか、テープの吹き込み、頑張ってくださいね。終わったら、ぜひぜひ、帰ってきてください。面白い話をいろいろ用意して、待っていま~す。
投稿者: ホクラニ桜子 | 2006年01月29日 15:26
日時: 2006年01月29日 15:26
この事件に感して・・・
心が痛むものの一人です・・
本当の真実は西開地とハラダさんしかわかりません。
ちょっとした言葉のニュアンスで全くとらえ方は変わってしまいます。
今はハラダさんとウメノさんのご冥福をお祈りしています。
投稿者: 匿名 | 2010年11月20日 22:50
日時: 2010年11月20日 22:50