
今回は「ハワイの洞窟」の第2弾。洞窟にまつわる、ちょっと不思議な話を紹介しましょう。
これも19世紀のハワイアン歴史家、サミュエル・カマカウが、当時のハワイ語新聞に書き記した話です……。
昔ハワイ島ワイメアに、ピリ博士と言う白人の医者が住んでいました。ピリ博士は、近所の酋長の一人と、こんな約束をしていたそう。「あなたが死んだら、ぜひ遺体をもらい受けたい」。というのは、この酋長は若い時分の戦争で槍で刺されたのですが……なんと槍が腹部を貫通したまま抜けなくなり、その状態で長生きした人だったからです! だからピリ博士は、酋長の死後、どんな状態で槍が刺さり、どうして酋長がそれでもピンピンしていたのか、じっくり研究したかったワケですね。
酋長は「ああ、いいよ」と快諾したそうなのですが……。いざ酋長が死んでみると、悶着が起こりました。遺族が決して、酋長の遺体を手放さなかったからです。もっともな話かもしれません。ハワイアンにとり、骨は何より大切なんですからネ。
それでも諦められなかったピリ博士。酋長の死後、毎夜家を見張っていると、思惑通りにある夜、2人の男が酋長の遺体を運び出すのを見つけました。こっそり後を付けると、一行はある崖縁で止まり、そこからロープで遺体を降ろしたそうです。
そこでピリ博士は翌朝、召使いと一緒に崖に戻り、自らもロープで崖を降りてみると……崖の途中に、洞窟がぽっかり口をあけているではありませんか。中に入ってみると多数の遺体(白骨化したもの)があり、くだんの酋長の遺体もしっかりそこに混じっていました。
そして洞窟の中には、昔酋長だけが身に着けた羽毛のケープやヘルメット、酋長のいる場所に常に掲げられたカヒリ(長い棒の先に羽毛で作られた円柱状のものがついている)、酋長たちが実際に愛用していた武器などなど、大変な価値あるハワイアンの工芸品が、ごっそり積まれていました。洞窟は酋長たちの埋葬場だったので、おびただしい数の埋葬品が供えられていたんですね。それこそ博物館級の、お宝のようなアイテムだったと思います。
ピリ博士はこの日は酋長の遺体に手をつけず、肉が朽ちて白骨になるまで、待つことにしました。そんなわけで1年後、ホノルルの上司から「ハワイアンの遺骨を手に入れよ」との連絡が来た時、槍の刺さった酋長の遺体はまだ洞窟に眠ったままだったそうです。
でも自分の研究材料を横取りされたくなかったのでしょう、ピリ博士は、なんと知り合いの酋長の遺体ではなく、その隣にあった白骨死体をくるみ、指示されたとおりハワイ島コナの学校に送りました。つまり。ピリ博士は、「研究材料になってもいいよ」と同意した酋長の骨ではなく、見知らぬ酋長の骨を持ち出してしまったんですね。故人の許可なく……。
それから1週間後。なぜか! その洞窟から大火事が発生しました。もちろん洞窟に人がいたわけではありません。洞窟の内部から起こった自然火だったそうです。結果、ピリ博士が発見したお宝も、槍の刺さった白骨死体も、全て灰に……。ピリ博士は、これら古代ハワイのお宝を、故郷のイギリスに持って帰ることを画策していたようです。でもその夢もフイに。不思議な話ですよね~。
一方、洞窟から運び出された方の遺体は、その後どうなったのでしょうか? 妙なことに、こちらも燃えてしまったんだそうですよ。洞窟の火事の後、それほど時間がたたないうちに、今度は遺体を保管していた学校が火事になって、焼け落ちてしまったからです。1862年7月18日のことでした。これは……偶然の一致なのでしょうか? 偶然にしてはできすぎた話だと思いません?
こうして、白人の学者たちの手に落ちようとしたとたん、焼けて灰になってしまった古代の遺体とお宝の数々。推測ですが、きっと洞窟に眠る酋長たちは、外国で見世物になるくらいなら、綺麗さっぱり消えてなくなることを望んだのではないでしょうか? それとも……もっと怖く言えば、祟りとか? 皆さんはどう思いますか?
そんなわけで。「やはりハワイの洞窟は怖い」という、結論なのでした。
あ、上の写真はクアロアの崖の上から見下ろした七色の海です。私も死んだら、こんな美しい海を見下ろす崖の中腹に眠りたいナ、なんて。暗いお墓の地下に眠るより、海を見下ろす洞窟の方が、ずっと気分がいいかもしれませんからね~。


コメント (2)
ALOHA!
ハワイのような気温の高いところでは白骨化は早いでしょうね。槍がどのように腹部に刺さっていたのか・・・また化膿しなかったのか、医学的に興味深いですね。腹膜炎を起こしたり内臓や血管が傷ついたりをどのように処置したのか?
私実はアメリカ製作のドラマ「CSI:科学捜査班」が好きなのです。ハワイでもやってますか?
パトリシア・コーンウェルの「検視官シリーズ」も全部読んでいます。
敬虔な酋長の死に恐れを抱きつつ、ピリ博士の気持ちがわかります。
燃えちゃって・・・残念!!!
投稿者: クレマチス | 2006年01月23日 16:42
日時: 2006年01月23日 16:42
クレマチスさん、すごい! こういう科学的な反応があるとは思っていなかったので、盲点突かれた、って感じです。私CSIとかも、見たことないんですよ……。
私がハテ?と思ったのは、せいぜい「なぜ酋長はハワイアンのくせして、自分の遺体を渡すことに同意したのか?」というくらい。「骨を侮辱されてもよかったんですかい!!」な~んて私が怒っても仕方ないですけど……。
投稿者: ホクラニ桜子 | 2006年01月23日 18:04
日時: 2006年01月23日 18:04